テクノロジーを活用した新たな民主主義のあり方を目指す団体「デジタル民主主義2030」(代表:鈴木健)は3月19日、深刻化しているネット上の詐欺広告に対し、市民参加型の通報システム「ストップ詐欺広告」(ベータ版)をリリースしたと発表した。
鈴木代表は「詐欺広告の被害を市民の力で解決していきたい。怪しい広告を見たらぜひ通報してください」と呼びかけている。
●SNS型投資詐欺、被害は過去最悪
「デジタル民主主義2030」は、テクノロジーを活用して時代にあった新たな民主主義の形を日本で実現することを目指す任意団体だ。
鈴木代表は、スマートニュースの取締役会長をつとめる一方、東京大学総合文化研究科特任研究員として、複雑系科学や自然哲学を研究している。
団体が今回、詐欺広告に着目した背景には、被害の深刻化と対応の遅れがある。
警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9538件(前年比48.7%増)、被害額は約1274億円(同46.3%増)にのぼり、いずれも過去最悪を記録した。
被害者への接触方法としては、ネット広告やダイレクトメッセージが全体の約8割を占める。著名人の画像や動画を無断使用した広告も氾濫している。
広告を配信するプラットフォーム側の問題も指摘されている。ロイター通信は2025年11月、アメリカのメタ社が、2024年の売上高の約10%にあたる約160億ドル(約2兆5000億円)が詐欺や禁止商品の広告によるものだったとする社内推計があったと報じている。
被害が深刻化する一方、日本では対応が警察庁や金融庁など複数の省庁にまたがるため、効果的な対策が打たれていない状況が続いている。
「ストップ詐欺広告」のサイト画面
●詐欺広告を「可視化」
3月19日に公開された通報システム「ストップ詐欺広告」は、台湾で導入されているシステムを参考に開発されたという。
ネット上で不審な広告を見つけた場合、このサイトに通報すると、どんな詐欺広告がどのプラットフォームでどれだけ出回っているかがわかるようになるという。
サイトでは、次のような機能が利用できる。
・詐欺情報の検索、閲覧とリスク表示 ・証拠画像付きの通報システム ・通報状況の可視化タイムライン ・詐欺広告の広がりを可視化する統計ダッシュボード
通報によって集まったデータは、政策への反映にも活用される見込みだ。団体では今後、AIによる一次スクリーニングや自動検知・通報機能の実装も検討しているという。
「ストップ詐欺広告」では、最近通報があった広告が一覧で表示される
●「日本でも分断のカウントダウンが始まっている」
「デジタル民主主義2030」は、通報システムの公開に合わせ、詐欺広告をめぐる今後の規制のあり方を社会全体で決めるため、市民が直接参加して議論する「熟議民主主義」の取り組みを始めると発表した。
プロジェクト実現に向けて、同団体は目標額500万円のクラウドファンディングも開始した。
この日、東京都内で開かれた記者会見で、鈴木代表は、過去10年の間にアメリカ各地を訪れ、民主主義の危機的状況を目の当たりにした経験に触れ、次のように語った。
「日本でも、アメリカのような分断のカウントダウンが始まっている。それを食い止めるために、日本でもデジタル民主主義のイニシアティブを立ち上げていく必要がある」