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なぜ「スカイマーク」は苦境に陥ったのか?「財務の数字」から見えてくる危機の構図
LCCの登場によって、航空会社間の競争はより厳しくなった

なぜ「スカイマーク」は苦境に陥ったのか?「財務の数字」から見えてくる危機の構図

国内3位の航空会社・スカイマークが苦境に追い込まれている。航空機大手のエアバスに発注していた超大型旅客機「A380」6機全ての購入を断念した。同社の決算資料によると、前払い金として納付済みの約260億円は全額が返還されない可能性があり、業績の大幅悪化を招きかねない事態になっている。

報道などによると、同社は2011年2月、6機の「A380」を約1915億円で購入する契約を結んでいたが、他の格安航空界社(LCC)の台頭もあり、競争が激化して業績が悪化。エアバスからは大手航空会社の傘下に入ることを求められてきたが、交渉は決裂した。エアバスからは700億円の違約金の支払いを求められているという。

スカイマークの2014年4〜6月決算では、今回の件について、事業継続に「重要な疑義を生じさせるような状況」と記載している。6機すべてを購入できなくなる財務状況とは、どんなものなのだろうか。なぜスカイマークは苦境に追い込まれたのか。服部峻介税理士に聞いた。

●無借金経営ではキャッシュ・フローが重要

「エアバスと『A380』の購入契約を結んだ2011年3月期の決算を見ると、売上は580億円と前年の414億円より約40%の増加です。営業利益も111億円と前年の31億円より約256%の増加となっており、LCCとしての地位の確立と路線の拡大により、非常に業績は好調だったと言えます」

では、投資の余力もあったということだろうか。

「スカイマークは無借金経営を掲げているため、自社でキャッシュを生み出すための営業キャッシュ・フローが重要となってきます。

営業キャッシュ・フローは148億円と順調に増額していました。とはいっても、この当時の財務状況からしても6機の『A380』を購入することは、営業キャッシュ・フローでいうと約14年分が必要で、チャレンジングな投資判断でした」

●全資産を売り払っても、払いきれない

では、直近はどうだろうか。

「2014年3月期の売上は860億円(前期時点の予想は951億円)で、前期比ほぼ横ばい、営業利益は▲25億円(前期時点の予想は58億円)となっており、急激な円安に伴う燃料費増加とさらなるLCCの台頭により、業績は下降しています。

肝心の営業キャッシュ・フローも3億円で、とうてい1機約300億円の「A380」を買う体力がないと思われる状況となっています」

同社にはどんな判断が求められているのろうか。

「最新の2014年4〜6月の決算短信をみると、『継続企業の前提に関する重要事象等』という項目に今回の件の記載があります。これは、スカイマークが存続することが怪しいということを示しています。

多額の違約金と記載されており、報道によると700億円とのことでした。最新の純資産は389億円で、全資産を売り払っても、払いきれない金額になっています。

この状況で乗り越えるためには、銀行支援を受けて、負債で資金繰りを改善するか、大手の傘下に入り資金を投入してもらうか、他社と提携するかといった、無借金経営で独立路線をいく今までのスタンスを崩す必要が出てくるでしょう」

過去の積極路線が招いた危機にどう立ち向かうのか。激変する経営環境の中で、難しい判断を迫られることになりそうだ。

【取材協力税理士】

服部 峻介(はっとり・しゅんすけ)

税理士業界の中で数少ない30歳の若手として、高校生・大学生の起業家を含め20代、30代の経営者といったスタートアップ企業を中心に、3年で160社超のクライアントを口コミのみで獲得し、会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

事務所名   : Seven Rich会計事務所

事務所URL:http://sevenrich-ac.com/

(税理士ドットコムトピックス)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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