良かれと思って叫んだ「ブラヴォー」、実は演奏者を失望させているかもしれません。
愛知県名古屋市を拠点に活動する「名古屋フィルハーモニー交響楽団」のXに投稿したメッセージが、クラシック音楽ファンのあいだで大きな反響を呼んでいます。
同楽団は、クラシックコンサートにおける鑑賞マナーについて「様々なご意見があるかと思いますが、終演後の早すぎる『ブラヴォー』は、私どもにとってうれしいものではございません」と投稿したのです。
●「静寂のほうがはるかにうれしい」楽団関係者は失望
同楽団はさらに「完璧な静寂の方が、はるかにうれしいです。今日は、指揮者も楽員も事務局員も、失望を感じておりますので、あえて投稿いたします」と続けました。
性別などに関する言及はありませんでしたが、アーティストへの敬意に欠け、自分の存在をアピールしようとする「ブラヴォーおじさん」がいるとして、SNS上では共感や議論が広がりました。
アーティストの士気を下げ、他の観客の鑑賞体験を損なう「迷惑行為」とも捉えられかねません。
では、こうした行為によって演奏会が台無しになった場合、主催者が法的に問題にすることは可能なのでしょうか。西口竜司弁護士に聞きました。
●マナー周知を徹底→注意しても「ブラヴォー」が繰り返された→「出入り禁止」可能
——望まないタイミングで「ブラヴォー」と叫び、演奏空間やパフォーマンスを損なう行為があった場合、楽団はその客を出禁にできますか。
観客が終演直後に「ブラヴォー」と叫ぶ行為自体は、ただちに違法とはいえません。
しかし、会場の秩序を乱し、他の鑑賞者や演奏者に支障を与える場合、主催者が入場契約に基づき、退場や出入り禁止を求めることが可能です。
コンサートは「静寂を共有する場」という性質を持つ場合もあり、その雰囲気を著しく損なう行為は不法行為や契約違反となる可能性もあります。
ただし、こうした厳しい対応をとる場合は、まずマナー周知を徹底し、注意後も改善が見られない場合に限るなど、慎重な運用が望ましいでしょう。