「心中」という名称の見直しについても慎重に検討を行う必要がある──。
こども家庭庁の専門委員会が9月11日に公表した報告書は、「子殺し自殺」など国内外で使用されている表現を紹介しながら、そう踏み込んで提言した。
背景には、親の「心中」に巻き込まれて死亡する子どもが後を絶たない現状への強い危機感がある。委員会は「心中は虐待である」と強調している。
●2023年度の虐待死は65人、心中以外では0歳児が7割弱
こども家庭庁の「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」は、虐待による子どもの死亡事例を検証し、再発防止策を提言する目的で毎年報告書をまとめている。
報告書によると、2023年度に発生または表面化した児童虐待による死亡者は65人。このうち「心中以外の虐待死」が48人、「心中による虐待死」が17人だった。
「心中以外の虐待死」48人のうち、0歳児が33人(68.8%)と突出して多く、さらにその半数近い16人(48.5%)は生まれてから1日も経たずに亡くなった「0日死亡」だった。
虐待の内容としては「ネグレクト(育児放棄)」が25人で最も多く、「身体的虐待」が21人と続いた。
一方、「心中による虐待死」17人の加害者は「実母」が9人、「実父」が7人。動機としては、「保護者自身の精神疾患、精神不安」が多くを占めていた。
●子どもは「保護者の所有物ではなく権利の主体」
今回公表された第21次報告は、2023年度の虐待死65人などを対象に「こどもの声やサインを見逃さない『こどもを中心』とした支援の充実」をテーマに掲げた。
特集「心中事例とその背景」では、過去の第5次から第20次報告までのデータも踏まえ、虐待死全体の約4割が心中であることを指摘している。
委員会は、特集の目的を「社会全体に対して心中は虐待であるという認識や、こどもは保護者の所有物ではなく、権利の主体であるという認識の周知・啓発となることを目指した」と説明した。
そのうえで「心中」という名称について、子どもの殺害と親の自死を明確に示す「子殺し自殺」などへの見直しを慎重に検討する必要があると提言している。
分析によると、心中事例で死亡した子どもの年齢は6歳以上が半数(50.9%)を占め、0歳児が半数近くにのぼる「心中以外の虐待死」とは異なる傾向を示した。