スーパーに美味しそうなスイカが並ぶ季節となりました。しかしスイカをめぐって、トラブルが起きることも──。弁護士ドットコムに「スーパーでスイカを棚に戻そうとした際、落として割ってしまいました」と、相談が寄せられました。
相談者は驚いたためか、店員に何も申告せず「逃げてしまいました」といいます。
誤ってスイカを割ってしまった場合でも、法的責任は問われるのでしょうか? 法的に検討してみます。
●疑問1「スイカの代金を支払わないといけなかった?」
答え:支払う必要アリ
相談者がわざとではなく、誤って(過失で)割ってしまった場合でも、民事上の不法行為責任(民法709条)は生じます。
したがって、相談者はお店に対しスイカの代金を支払わなければなりません。
●疑問2「逮捕される可能性はある?」
答え:刑事責任は負いません
刑事責任、つまり警察に逮捕や事情を聞かれることを心配する人もいるかもしれません。
ですが、その心配はありません。
まず刑法上問題となりそうなのは「器物損壊罪」(刑法261条、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料)です。
しかし、この罪は故意犯のみを処罰する規定です。つまり「わざとスイカを落とした」人を処罰する罪であって、過失犯(うっかりスイカを落としてしまった人)の処罰規定はありません。
そのため、相談者が処罰されることはないでしょう。
●番外編:疑問3「過失犯はどんな場合も罪にならないの?」
ここからは応用編です。
「うっかりだったら、どんな場合も罪に問われないの?」と思う方もいるかもしれませんね。結論的には「ケースバイケース」なんです。
少し複雑な説明となりますが、刑法では、器物損壊罪に限らず、故意犯のみが処罰されるのが原則です。
刑法では、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定されているからです(38条1項)。
したがって、過失犯処罰のための「特別の規定」がないかぎり、過失による行為は処罰されません。
ただ、例外もあります。
たとえば過失傷害罪(209条)、過失致死罪(210条)や、自動車運転死傷行為処罰法の自動車運転過失致死傷罪など、一定の場合には、過失犯を処罰する規定が定められています。