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「浮気している」会社の問い合わせフォームに届いたメッセージ、卑劣な攻撃でも「名誉毀損にはならない」ワケ
画像はイメージです(mits / PIXTA)

「浮気している」会社の問い合わせフォームに届いたメッセージ、卑劣な攻撃でも「名誉毀損にはならない」ワケ

会社ホームページの問い合わせフォームで中傷されて気が滅入っている──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

匿名の人物から相談者個人を名指しして、「キモい、ブサイク」と容姿を中傷する文言や、「浮気している、風俗に通っている」など事実無根の言葉を記載したメールを、問い合わせフォームから不定期に何度も送ってくるそうです。

当初は無視していたものの、メールは数名の社員が確認できる状況のため、勘違いされているかもしれないと不安になってきているようです。

「このくらいで名誉毀損や侮辱になるのかもわからない」と悩む相談者ですが、法的にはどう考えられるのでしょうか。またどう対処すればよいのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。

●名誉毀損や侮辱には当たらないが…「業務妨害罪はあり得る」

──今回のケースは名誉毀損や侮辱に当たるのでしょうか。

名誉毀損や侮辱といえるためには、その誹謗中傷が「公然と」行われる必要があります(刑法230条1項、231条参照)。

この公然性は、「不特定または多数の者に伝わるような状態」である場合に認められます。

また、特定または少数の者にのみ伝わるような状態で誹謗中傷を行った場合であっても、誹謗中傷となるような事実を伝えた相手方から不特定または多数に伝播する可能性があるときには、公然性が認められます。

本件の誹謗中傷は、会社HPの問い合わせフォームから行われており、1対1の通信であるメールの形式であること、これを閲覧することができるのも数名の社員に限られていることから、一般的には不特定または多数への伝播可能性が否定され、公然性が認められる可能性は低いでしょう。

──問い合わせフォームからの誹謗中傷に対して、どのような対処が考えられますか。

本件の誹謗中傷が匿名の人物により行われていることから、発信者情報開示請求が想定されます。

しかし、前述のとおり、本件の誹謗中傷は会社HPの問い合わせフォームを通じ、1対1の通信であるメールの形式により行われているため、高度の伝播性を前提とする「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法2条1号)に該当せず、発信者情報開示請求の対象にもなりません。

したがって、メールの送信者を特定することがそもそも困難です。

本件の誹謗中傷は何度も行われているということですから、その頻度や内容によっては会社に対する威力業務妨害罪となる余地があります。

ただし、この場合であっても発信者情報開示請求による送信者の特定は困難であるため、警察に相談することが適当でしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

近藤 暁
近藤 暁(こんどう あき)弁護士 近藤暁法律事務所
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。

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