感染したコンピュータを使用不能にしたり身代金を要求するメッセージを表示させたりするウイルス「ランサムウェア」を生成AIで作成したなどとして不正指令電磁的記録作成などの罪に問われた男性被告(25)に対して、東京地裁は10月25日、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。求刑は懲役4年だった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「刑事責任は重い」 前科なしなどを考慮、執行猶予
判決などによると、男性は2023年3月31日ごろ、自宅でパソコンなどを使って、特定の拡張子を持つファイルを暗号化して使用不能にしたり暗号資産の支払いを求めるテキストファイルを作成したりなどの不正な指令を記述したプログラムのソースコードを作成したとされる。
このほか、第三者になりすまして通信サービス会社からSIMカードをだまし取ったり、他人を装って暗号資産の口座を開設したなどとして、詐欺、詐欺未遂、犯罪収益移転防止法違反の罪にも問われた。
川瀨孝史裁判官は判決で「自己中心的な動機に酌量の余地はない。被告人の刑事責任には重いものがある」と指摘。他方、事件の関係者の関与状況について男性が知っていることを供述していることや前科がないことなどを踏まえ、執行猶予付きの判決とした。
●IT知識なく「自力では作れなかった」
これまでに開かれた被告人質問では、男性が幼少期、児童養護施設で生活していたことや、その後母や祖母とそれぞれ別に生活していた時期があったことなどが明かされた。
ランサムウェアについては、「(ChatGPTの)制限を解除する方法を調べて、生成AIを使ってコードを書かせました」と説明。
プログラミングの技術やITの知識を特に持っていなかったため、「自力ではランサムウェアを作ることはできなかったと思う」と述べた。
ランサムウェアの作成にかかった期間を「1カ月ぐらいだったと思う」と振り返ったが、「僕の中で完成したという認識はなかったんですけど、結果的にはできました」とも述べた。
今回生成AIで作られたというランサムウェアが外部のコンピュータを実際に攻撃して身代金を得られるほどの完成度だったのかについては、法廷でのやりとりだけでは分からなかった。
男性は犯行の動機について「ランサムウェアを使って脅迫して、楽してお金を稼ごうと思っていました」と話し、「普通に真っ当な仕事をしていきたいと思います」と今後の意気込みを語っていた。