ディスカウントショップ大手「ドン・キホーテ」の運営会社が、新たな取締役の候補を発表した。新任取締役候補5人の中で特に注目を集めているのが、創業会長・最高顧問である安田隆夫さんの息子である裕作さん(22歳)だ。
日本経済新聞(8月16日)によると、裕作さんは9月予定の定時株主総会の承認を経て、非常勤の取締役に就任する見通しという。若返りを狙った人事とされるが、ネット上では「同族経営」や裕作さんの「バイト経験」を揶揄するような声もある。
どうしても賛否はあるかもしれないが、負けずにがんばってほしいところだ。今回のドン・キホーテの人事についてはさておき、一般論として「同族経営」にどんなメリットとデメリットがあるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
●創業家が幅をきかせる企業は国内に多数ある
「同族経営」という言葉が意味する内容にもよりけりですが、実は、日本の上場企業の半数以上は何らかの意味で同族経営と言いうるという研究結果もあります。
そして、そのような「同族経営」の企業の中で、世界的に見ても利益をあげており、企業として成長している、あるいは健全に維持できていると評価されているところが少なくありません。
そのような小難しい話はともかく、たしかに日本の名だたる上場企業でもいわゆる「同族経営」であるとか、あるいは、創業家が幅をきかしている、創業家の影響力が現在も隠然としてある、といわれる企業は多数あります。
創業家が影響力を有している企業の場合、その一族をかなり早期の段階で取締役として迎えることが可能です。さらにそのような経営人事を株式上場しているのに株主総会で決議できることは外国人投資家、機関投資家の理解を得ている、ということでもあります。でないと、そもそも取締役として選任しようという議案すら提案されないはずです。
●長期的な経営戦略を策定・実行できるメリットがある
メリットとしては、そのような現状を信任している株主構成をバックボーンとして、中長期的な視野に立った経営が可能となることです。株主への短期的利益の分配に偏らず、より長期的な経営戦略の策定や実行ができるということです。
また、若年のころから経営陣の一人として参画するのですから、若年の段階で経営に関する経験や知識を身につける機会に恵まれます。そのような経営者が次代の経営を担う中心メンバーとなるならばそれは大いに価値のあることです。
●将来にならないと評価できない
ただし、デメリットとして、しばしば経営の評価が親族びいきとなり、信賞必罰という文脈から大きく外れる処遇が事実上横行するリスクもあります。たとえば会社とプライベートの公私混同です。もちろん、会社法上の問題ともなってきます。
今回の人事では、新任取締役があまりに若いことが理由の一つとして話題になりましたが、他の企業や業界での経験を積んできて、壮年期に取締役として迎えるのか、あるいは今回のように若くして取締役として迎えるのか、いずれの判断が良かったのか、ということは将来にならないと評価できません。