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困窮や妊娠…支援必要でも「誰にも相談したくない」若者の1割が回答 専門家は「ネットやSNSの活用を」
認定NPO法人「D×P」の理事長・今井紀明氏

困窮や妊娠…支援必要でも「誰にも相談したくない」若者の1割が回答 専門家は「ネットやSNSの活用を」

支援が必要にも関わらず、約1割が「誰にも相談したくない」——。生活苦や孤独・孤立感を抱える若者たちへの大規模アンケート調査(※)によって、そんな結果が明らかになった。4月16日、認定NPO法人「D×P」の理事長・今井紀明氏が発表した。

相談したくない理由の多くは「相談しても解決できないのでは」「困りごとを上手く伝えられないかも」という不安によるもの。「どのような人や場所なら相談したいか」に対しては、「無料で相談できる」「相談相手が同じ悩みを持っている・持っていた」「匿名で相談できる」が挙げられた。

この日、厚生労働省で行われた会見で、今井氏は調査結果を踏まえ「ネットやSNSなど若者にとって身近で敷居が低いツールを活用して、無料・匿名で、担当者との間に上下関係がなく、同じ立場で相談できることが重要」と、セーフティネットのあり方を提言した。(ジャーナリスト・肥沼和之)

※2022年度「孤立孤独/生活苦を抱える若者への緊急支援事業」で採択された7団体から、何らかの支援を受けた12,765名のうち、2,347名を対象に2023年10月~2024年2月に実施。回答者の8割は10~20代の女性

●借金や滞納「親に頼れず、友達に話せない」

D×Pは不登校、虐待、経済的困難などさまざまな境遇の、孤立した10代のサポートをしているNPO。コロナ禍や物価上昇の影響で、同団体が行っているLINEを用いたオンライン相談サービスへの登録者や、現金給付・食糧支援の申し込みはここ数年で急増。支援を求める若者たちの増加や、厳しい現状が顕著に表れているという。

そんななか、困窮しているのに相談ができていない若者たちに対し、SNSやネット広告を活用したデジタルアウトリーチなどを実施。相談窓口があることの周知や、支援を受けることをポジティブに捉えられるような発信を、休眠預金を活用した2022年度「孤立孤独/生活苦を抱える若者への緊急支援事業」として行ってきた。アンケートもその一環として開催したものだ。

匿名で相談できることへのニーズが高いことについて、今井氏は「相談を躊躇してしまう内容が多いからでは」と、D×Pでの活動を踏まえて分析する。

今井氏「借金がある、支払いを滞納している、電気やガスが止められている、などの相談はなかなかできない。親に頼れず、友達に話せない、(支援の)窓口に行くのも怖い。相談してもどういう返事をされるかわからない、怒られるかもしれない。そういった不安感の高さが、アンケート結果を示していると思う」

●「不安を強く抱えているからこそ、リアルな現場に相談に行きづらい」

同事業に共同参加しているREADYFOR株式会社の市川衛氏は、「誰にも相談したくない」という回答の2つの理由に着目。

「解決できない・困りごとを上手く伝えられないという不安を強く抱えているからこそ、リアルな現場に相談に行きづらい。ネット広告やSNS(での周知)を通じて、敷居を低く感じてくれたのでは」と、デジタルアウトリーチによって相談しやすい状況を作れたのではと振り返った。

また今回、支援を受けた方の7割以上が、「今後も行政やNPOの支援を受けたい」と、前向きな意識の変化が見られた調査結果にも言及。「食料支援や金銭支援をひとつのフックにして、助けられたという経験を持っていただき、そのうえで支援を続けていくことが有効だと裏打ちされた」と手ごたえを口にした。

●「妊娠がわかったけれど中絶費用がない」

妊娠に関する相談・支援を行っている認定NPO法人ピッコラーレも、同事業に参加する団体のひとつ。同NPOの尾原亮子氏は、WEB広告を出稿したところ、HPへのアクセスが4.7倍に増えたと明かす。相談者も多い月では3倍になったという。

出稿期間中には「妊娠しているかもしれない、でも親には相談できない」「妊娠がわかったけれど中絶費用がない、パートナーに伝えたらブロックされた」といった若者の相談が寄せられた。

こうした相談に応じ、正しい情報や知識を提供したり、病院や行政につなげたりしたケースもあり、「絶望する状況で、わらにもすがる思いで検索して、(同団HPが)表示されてつながったことで、安心をもたらすことができた」と成果をかみしめた。

●デジタルアウトリーチのノウハウを今後に

2024年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行された。孤独に悩む人を置いてきぼりにせず、支え合いやつながりのある社会づくりを目指した法案だ。

助けを必要としているひとりでも多くの人に手を差し伸べ、適切な対応・支援をしていくため、今後は事業を通じて得たデジタルアウトリーチのノウハウを、自分たちの団体で活かすのはもちろん、必要としている団体に提供していきたいと市川氏と今井氏は展望を話した。

市川氏「引きこもりの方に直接ではなく、引きこもりのお子さんがいて悩んでいる親御さんにターゲティングを行うこともできる。これまではつながれなかった層とも繋がれて、支援を届けられるのでは。(支援団体に向けて)研修なども実践していきたい」

今井氏「困窮や妊娠、孤立で悩みを抱えた若者・子どもに、国や自治体がリーチしているとは言い切れない。もっと広く広めたい。支援制度を知らない、知っていても窓口に行ったり電話相談したりできない人もいる。オンラインで各種相談や申請ができるよう、ステップはあるが(環境や制度を整備していくことが)必要かと思う」

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