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「いいね」で賠償命じる初判断、中澤佑一弁護士が解説「特殊事例で、一般論ではない」「萎縮効果生じぬよう正しい報道を」
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「いいね」で賠償命じる初判断、中澤佑一弁護士が解説「特殊事例で、一般論ではない」「萎縮効果生じぬよう正しい報道を」

ジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10月20日、東京高裁であり、石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田議員に55万円の賠償を命じた。

ツイッターの「いいね」で不法行為を認めた判決は初めてとみられる。

今後、一般のツイッターユーザーの「いいね」にも気を付けるべき点などはあるのだろうか。今回の判決の意義について、中澤佑一弁護士に聞いた。

●一般ユーザーにも影響する?

ーー今回の判決をどのように見ますか

名誉感情の侵害に関する判断枠組み自体はこれまでの裁判例と同じと思われます。

一審と結論が変わった理由の一番大きいところでは、一審では「いいね」を押した主観的な意図が明確に認定されなかったのに対し、高裁ではこれまでの経緯(別媒体で批判していたこと)などを丁寧に事実認定したうえで、「名誉感情を害する意図をもって」いいねをしたとまで認定されています。

またフォロワー数が多いこと、国会議員であるという、影響力も認定されています。

ーー判決が報じられると、これから「いいね」にも慎重になるべきなのか、と心配する声もみられます

害意まで認定できた著名人の事例ということで、特殊な事例かと思います。一般論として誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したら直ちに違法になるということではないと考えられます。

「いいねが違法」という結論だけ広まって変に萎縮効果が生まれたり、スラップ訴訟的な使われ方がされないように正しい判決内容を報道してゆくことが大事ではないでしょうか。

匿名の相手に対する発信者情報開示の場合は主観的な意図の認定が難しく、なかなかこの判決の理由で開示を認めるのはさらに難しいかもしれません。

プロフィール

中澤 佑一
中澤 佑一(なかざわ ゆういち)弁護士 弁護士法人戸田総合法律事務所
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。

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