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台風で「屋根瓦」が隣家に飛んでしまった! 傷つけたら賠償しなければいけない?
(Graphs / PIXTA)

台風で「屋根瓦」が隣家に飛んでしまった! 傷つけたら賠償しなければいけない?

夏から秋にかけて増える台風の上陸。大きな被害が出ないことを祈るばかりですが、弁護士ドットコムには「台風で屋根瓦が飛び、隣家に傷をつけてしまった」という相談が複数寄せられています。

「台風の影響で自宅の屋根瓦が飛び、隣の家の屋根を破損させました。隣人から屋根を直すように言われていますが、瓦が当たったことが原因か、台風の影響かわからないところもあります」

「昨日の台風で屋根上の太陽熱温水器が飛び、隣の家の屋根に落下しました。怪我などはなく物的な被害だけですが、隣からは雨漏りしているので、早急に修理してほしいと言われています」

台風で自宅の物が飛び隣家を傷つけた場合、弁償する法的義務はあるのでしょうか。河野晃弁護士に聞きました。

●「瑕疵」があるかどうか

台風で自宅の物が飛んでしまい第三者に損害を与えるという状況は、どんな方にも起こりうる話ですね。こういった場合、法律はこのようなルールを定めています。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」

つまり、土地の工作物(家など)の設置や保存が原因で他人に損害を与えてしまった場合、一次的には家の占有者(住んでいる人)が責任を負うというルールです。賃貸の一軒家の一部が風で飛んで隣家を壊したという場合、家の持ち主ではなく、まずは借家人が責任を追及されうる立場になります。

ただし、これは無条件に責任を負わされるというルールではありません。責任を負うのは損害を与えた側の家に住んでいる人に「瑕疵」がある場合に限られます。

「瑕疵」とは、いいかえると「社会通念上具備を期待し得べき性能ないし安全性の欠缺を指称するもの」とされています。まだ少々わかりにくいですが、要するに「普通に考えてこの程度の安全性は備えておいてくださいよ、と期待されているレベルに状態を保っておけばOK」ということです。

では、台風で自宅の物が飛んだ場合にどうなるか、ですが、これは一概に「台風で飛んだらダメ」とか「台風で飛んだなら仕方ない」と言い切れる話ではありません。

極端なたとえですが、台風と言っても歴史上稀有なレベルの風速が吹き荒れるケースもあれば、台風じゃなくても経験するレベルの風速の場合もあります。前者の場合は責任を問うのはやりすぎだという判断になりやすいでしょうし、後者であれば責任を問うべきという判断になりやすいというお話です。

おそらく揉めるケースはこのどちらでもない微妙なケースが多いと思いますので、ご自身で判断せずに弁護士にご相談いただくのが良いかと思います。

プロフィール

河野 晃
河野 晃(こうの あきら)弁護士 水田・大江法律事務所
兵庫県弁護士会所属。2010年弁護士登録。民事事件(中小企業法務・交通事故等)、家事事件(離婚・相続)、刑事事件など、多種多彩な業務を行う。趣味はゴルフ、野球など。日本一話しやすい弁護士を目指す。

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