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伊藤詩織さん「当事者としての発信はこれっきりにしたい」  被害からの7年間を振り返る
会見を開いた伊藤詩織さん(2022年7月20日、弁護士ドットコム撮影、東京都)

伊藤詩織さん「当事者としての発信はこれっきりにしたい」  被害からの7年間を振り返る

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者のジャーナリスト・山口敬之さんから性暴力被害にあったとして、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、最高裁が7月7日付で上告を棄却した決定を受け、伊藤さんが7月20日、都内で記者会見を開いた。

伊藤さんは「当事者としての声を発信するのはこれっきりにしたい。これまでの歩みと得た学びを少しでも発信できるように、今後も伝えるという仕事で還元していけたらなと思っています」と被害からの7年間を振り返った。

●民事裁判「負担の大きい作業」

最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は、山口さんの上告を棄却。同意がないのに性行為に及んだと認定し、約332万円の賠償を命じた二審・東京高裁判決が確定した。

約332万円の賠償金について、伊藤さんは「弁護士費用や医療費は、到底この金額ではカバーできるものではない」と話し、「民事裁判でいろいろなことが分かったことは有意義だったが、踏み出すのに壁がある、負担の大きい作業だなと感じます」と振り返った。

また、著書などでのデートレイプドラッグに関する言及が名誉毀損とプライバシー侵害にあたるとして、山口さんが伊藤さんに1億3000万円の賠償を求めた反訴について、第一小法廷は伊藤さん側の上告を棄却した。伊藤さんに55万円の支払いを命じた二審・東京高裁判決が確定した。

伊藤さんは「自分の経験として語ったことが、話してはいけないこととして捉えられ、今後どういう風に自分の受けた被害を語っていいのかと感じた」と困惑した様子。代理人の佃克彦弁護士は「判決は性的加害行為の存在自体を認めながら、その被害を訴え出た言論行為について違法と判断した。非常にバランスを欠いている」と批判した。

●「当事者の行為に私たちがどう向き合うのか」

2019年12月に東京地裁で判決が言い渡された後、伊藤さんの母は「まさか自分の家族に起こるとは思っていなかった。母親としては、一番娘には起きてほしくない悪夢だった」と話したという。

伊藤さんは「いろいろなニュースが流れる中で、自分ごととして捉えることはなかなか難しい。だからこそ、当事者の行為に私たちがどう向き合うのか。法律が追いついていないところに対して、一緒に目を配ってほしい」と呼びかけた。

今、山口さんに対して思うことを尋ねられると、「(山口さんは)自分は違法なことや犯罪を犯していないと繰り返しおっしゃっていた。それは日本の司法に対する問いかけだと思う。日本では同意のない性行為は犯罪ではないかもしれない。それを大きな声で言える社会なんだと思います。それに対して、私たちがどう受け止め反応するかが、今後の課題だと思っている」と話した。

伊藤さんは今も、「今日は大丈夫」と思う日もあれば、起き上がれない日もあるという。そんな日々を繰り返す中で、この数年、少しずつ素直に自分の心と向き合うことができるようになったと話す。

「それがある意味での回復なのかなと私はとらえています。自分の心に浮かぶことや気持ちに素直に向き合うことは、大変なことだし時間がかかることだけど、自分にはとにかく正直になってほしいし、周りは耳を傾けることが必要だと思います」。

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