STAP論文「不正があった」とする理研調査委「最終報告書」 弁護士はどう見るか?
理研調査委員会が作成した「研究論文の疑義に関する調査報告書」(写真)

STAP論文「不正があった」とする理研調査委「最終報告書」 弁護士はどう見るか?

STAP細胞の研究論文をめぐる疑惑について、理化学研究所(理研)の調査委員会は、4月1日に公表した最終報告書のなかで、筆頭著者である小保方晴子ユニットリーダーがねつ造や改ざんといった「研究不正行為」を行ったと認定した。

調査委は、DNA電気泳動の画像の切り貼りについて、「小保方氏が改ざんに当たる不正行為を行った」と判断。また、博士論文からの画像流用について、「小保方氏がねつ造に当たる不正行為を行った」と判断した。

このような調査委の判断に対して、小保方リーダーは「悪意のない間違いであるにもかかわらず、改ざん、ねつ造と決めつけられたことは、とても承服できません」という声明を発表し、理研に不服申立をする意向を明らかにしている。

はたして、理研の判断は適切だったのか。先日、研究不正防止に関する理研の内規について解説してもらった冨宅恵弁護士に話を聞いた。

●小保方リーダーの説明は「改ざん」を否定する理由にならない

まず、理研の調査委が「改ざん」と認定したDNA電気泳動の画像の切り貼りについてはどうか。

「小保方氏は、この画像に切り貼りについて、実験結果をより分かりやすく伝えるために加工したことを認めています」

このように冨宅弁護士は説明する。実は、小保方リーダーは不服申立に関する声明のなかでも「見やすい写真を示したいという考えからFigure1iを掲載したにすぎません」と述べており、加工した事実自体は否定していないのだ。

「このような小保方氏の説明を前提とすると、真実と異なる実験結果の画像を意図的に使用したことが認められますので、規程が定める『改ざん』に該当することになります。

小保方氏は、実験結果をより分かりやすくするために画像に加工を施す行為が、論文において許されないことだと知らなかったと説明していますが、意図的に行ったか否かを判断するにあたり、この点は問題になりません。

したがって、小保方氏の説明は、調査委員会の判断を覆す理由にはなりえません」

●「意図的かどうか」は直接的に確認できない

では、博士論文からの画像流用については、どうだろうか。

「小保方氏は、脾臓の血液系細胞から作成したSTAP細胞の画像について、異なる実験結果を示す画像を意図的に使用したことを否定しています。そこで、調査委員会としては、この点について小保方氏が意図的に行ったか否かの判断を行う必要があります」

こう述べたうえで、冨宅弁護士は次のように続ける。

「そもそも、ねつ造や改ざんなどの『研究不正行為』とは、意図的に行った行為をさします。この点、理研の規程では、『悪意』と表現されていますが、規程に定められた『悪意』とは、何か悪いことを企てるという意味ではなく、『意図的であった』という意味ですので、注意してください」

小保方リーダーは、意図的に博士論文の画像を流用したことを否定している。声明のなかでは、「真正な画像であると認識して掲載したもので、単純なミスであり、不正の目的も悪意もありませんでした」と説明している。

ここは、調査委員会の認定と対立するところだが、どう考えたらいいのか。

「意図的に行ったか否かという問題は、内心の問題であるため、直接的に確認することができません。したがって、客観的に存在する資料や本人の説明などから推測する以外に方法がありません。

今回の調査報告書では、客観的な資料として、次のような点が指摘されています。

(1)使用された画像は、STAP細胞の多様性を示す研究成果の中核を占める非常に重要な画像として論文で紹介されているにもかかわらず、細胞の週齢や種類、生成の方法が異なった写真が使用されている

(2)問題の画像は、小保方氏が異なる方法で生成した細胞の画像であるとして、2012年4月にネイチャー誌に投稿したものの採用されなかった論文に使用されていた

(3)小保方氏は、ネイチャー誌に再投稿する際に画像の差し替えを行っているにもかかわらず、問題の画像については差し替えを行っていない

(4)3年間の実験ノートが2冊しかないなど画像データの由来を科学的に追跡することができず、由来の不確実なデータを論文に使用した可能性がある

調査委員会は、以上の点を理由として、小保方氏が意図的に実験結果をねつ造したと判断しています」

●調査委員会は「非常に慎重な判断」をおこなっている

この調査委の判断について、冨宅弁護士は「私個人の意見としては、妥当な判断であると考えています」と述べる。なぜだろうか。

「今回の調査では、理研の研究員3名と外部の教授2名、弁護士1名に加え、イメージ画像の復元について、外部の専門家の意見を参考にして判断が行われています。

また、今回の最終報告書では、客観的な資料にもとづき、研究不正行為を認定することが困難なものについては全て否定しているうえ、博士論文で使用された画像と今回の論文で使用された画像が『同一のもの』と断定せずに『酷似するもの』と判断するなど、非常に慎重な判断を行っていると評価することができます」

このような点から、「博士論文の画像の流用は、意図的な行為だった」という調査委員会の判断は妥当であるというのだ。

常識的に考えても、論文において肝になる画像であるにもかかわらず、全く由来の異なる画像を「単純なミス」で使用してしまった、という主張はなかなか認められにくいのではないかといえるかもしれない。

小保方リーダーは4月8日に不服申立をして、翌9日に記者会見を行うとしている。理研の調査委員会の認定に対して、どのような反論をするのか、注目される。

(弁護士ドットコムニュース)

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