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「STAP問題」調査委員会の「最終報告」 記者会見で注目すべき3つのポイント
理化学研究所・調査委員会の石井俊輔委員長

「STAP問題」調査委員会の「最終報告」 記者会見で注目すべき3つのポイント

新しい万能細胞「STAP細胞」の研究論文をめぐる疑惑について調査を進めてきた理化学研究所(理研)の調査委員会は4月1日、東京都内で記者会見を開き、最終報告書を発表する。

この記者会見の模様は、ニコニコ生放送などで中継される予定だが、どのような点に注目すればいいのだろうか。争点になるだろう「3つのポイント」をまとめてみた。

<ポイント1> 小保方リーダーは「不正」を働いたのか?

STAP細胞は1月下旬、理研発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダーらが英科学誌「ネイチャー」に発表した研究論文によって、世界的な注目を集めることになった。しかし、この論文について、不自然な点があるという指摘があいつぎ、理研は調査委員会を設けることになった。

いくつかの疑問点のうち、特に焦点となっているのが、実験画像の切り貼りと、他の論文からの画像流用という2点だ。

1つ目は、STAP細胞のDNAを分析する「電気泳動」の画像が切り貼りされていたのではないかという疑惑だ。小保方リーダーは調査委員会のヒアリングに対して、画像を切り貼りしたこと自体は認め、「やってはいけないことと認識していなかった」と回答したという。今回の調査報告では、小保方リーダーの行為が「改ざん」にあたり、不正行為と認定されるかどうかが、ポイントだ。

2つ目は、STAP細胞の万能性を示す画像が、小保方リーダーの博士論文の画像と同じものではないかと指摘されている点だ。小保方リーダーは「だいぶ昔の実験で得られた画像を間違って使ってしまった」と弁解しているという。だが、調査委員会の石井俊輔委員長は3月14日の中間報告の記者会見で、このような取り違えは「かなりレアなケース」であるとして、調査を続けていることを明らかにした。つまり、小保方リーダーが「意識的に」画像を流用した可能性を否定しなかったのだ。

今回の最終報告では、この画像流用が故意だったのか、それとも過失だったのか、どちらと認定されるかが注目される。もし故意、つまり、わざと画像を流用したのだとされれば、こちらも「改ざん」にあたるとみなされる可能性が大きいだろう。

<ポイント2> 笹井副センター長の「役割」と「責任」は?

世紀の発見ともてはやされたSTAP細胞については、研究論文の筆頭著者である小保方リーダーにスポットライトがあたってきたが、「隠れたキーパーソン」として注目されるのが、小保方リーダーの上司であり、STAP論文の共同著者でもある理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長だ。

笹井副センター長は、再生医学の分野で日本を代表する研究者の一人とされ、生命科学の領域で顕著な功績をあげた現役研究者に贈られる上原賞を受賞したばかりだ。研究者としてのキャリアが浅い小保方リーダーを全面的にバックアップしてきたと見られており、今回の論文の作成にあたっても、小保方リーダーとともに中心的な役割を担ったとされている。

3月14日の中間報告の記者会見では、調査委員会の石井委員長が「論文の作成はかなりの部分、小保方さんと笹井さんの共同作業だったと認識している。論文の画像をどのようにアレンジして、論文のメインテキストをどういう論理の流れにするかということについては、笹井さんが指導したと認識している」と述べている。理研の野依良治理事長も、笹井副センター長について「責任は非常に重いと思っている」とコメントしている。

注目点は、そんな笹井副センター長が、今回の論文作成において、具体的にどのような「役割」を担ったのかだ。また、もし小保方リーダーの不正行為が認定された場合、笹井副センター長の「責任」をどうとらえるべきかも、大きな問題となるだろう。

<ポイント3> STAP細胞は本当に「存在」したのか?

一般的な関心という点では、そもそもSTAP細胞なるものが存在したのかというのも、重要な問題だ。3月14日の中間報告の記者会見でも、記者たちから「STAP細胞はあったのか、なかったのか」という質問が何度も飛んだ。

しかし、今回の調査委員会の目的は、STAP細胞の研究論文に「不正」があったかどうかを調べることであり、STAP細胞が存在したのかどうかは、本来、調査の対象外だ。理研発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長も「STAP細胞の真偽については、科学コミュニティの検証に委ねたい」と発言している。

だが、中間報告の発表後も、今回の論文に関わった研究者以外からは「STAP細胞の作成に成功した」という報告は寄せられておらず、「実はSTAP細胞は存在しないのではないか」という声がますます高まっている。

さらに3月下旬には、小保方リーダーがマウスから作成したという「STAP細胞」を調べたところ、実験に使われていないはずの別種のマウスの遺伝子が見つかった、という報道が流れた。これは、今回のネイチャー論文とは別の実験だが、STAP細胞の存在そのものに対する疑念が強まったのは間違いない。

このような「疑念」を踏まえ、今回の記者会見でも、「STAP細胞は存在していたといえるのか」という質問が出るとみられる。こうした問いに対し、理研の調査委員会が何らかの踏み込んだ回答を行うのか、あるいは、中間報告の時のようにその点には明確に答えずに終わるのか。記者たちとのやり取りも注目と言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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