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裸の画像と名前がセットで拡散する悪質事例も…「リベンジポルノ」対処法
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

裸の画像と名前がセットで拡散する悪質事例も…「リベンジポルノ」対処法

交際中に撮った恋人の裸の画像や性行為中の動画などを、別れた腹いせに無断でインターネット上に投稿する「リベンジポルノ」。スマホが普及し、写真や動画を手軽に撮影できるようになったぶん、被害に遭うリスクも高まっています。

リベンジポルノの被害者にならないために何ができるのか。そして万が一、被害にあったらどんな対応ができるのか。インターネット上の人権侵害に詳しい中澤佑一弁護士に聞きました。(取材・構成/ ライター・吉田彩乃)

●「性的に興奮させる」なら、下着や水着姿もリベンジポルノに該当

ーーまず、どのような画像や動画を流出させるとリベンジポルノにあたるのか、法律の定義を教えてください。

2014年に成立した「リベンジポルノ防止法」(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の条文では、広く定義されています。

第三者の閲覧が前提とされていない写真や動画のうち、まず1つめが、「性交又は性交類似行為にかかる人の姿態を撮影したもの」。2つめが、「人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」。

3つめが、「衣服の全部又は一部を着けない状態の姿態であって、殊更に人の性器など性的な部位が露出され又は強調されているもの」とされています。

ーー下着姿や水着で写っている写真や動画を流した場合も、リベンジポルノにあたるのでしょうか。

単に下着や水着で写っているだけの状態では、リベンジポルノにあたりません。下着や水着姿の場合、性的な部分が強調されており、性的に興奮させるような画像や動画の場合には該当します。

ーー性的に興奮させる要素があるかどうか、ということが、ポイントになるのですね。

そうです。ですから、被害者は必ずしも女性に限りません。元交際相手に裸の画像を流された、という男性からの相談もあります。

ーー裁判で、加害者をどのように訴えることができるのでしょうか。

刑事と民事の両方で可能です。刑事罰としては、不特定多数の人に、リベンジポルノにあたる画像を提供した人は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。また、加害者本人がネットなどに画像を投稿するのではなく、第三者に投稿させる目的で画像提供をした場合は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

民事では、画像や動画を流されて精神的な苦痛を受けたことに対しての損害賠償請求が可能です。拡散の範囲や、写っている内容にもよりますが、慰謝料300万円程度は請求できると思います。

一般的にネット上で、文字による誹謗中傷を受けた場合の慰謝料は数十万円から100万円程度の判決となることが多いです。リベンジポルノのように裸の画像を流されてしまうと被害者の精神的ダメージがより大きくなります。拡散の範囲や、写っている内容にもよりますが、一般論としてはより高額の慰謝料請求ができると思います。

●画像・動画を撮られたら「相手の良心に期待するしかない」

ーー弁護士に依頼した場合、投稿された画像の削除は、どのような流れで行われるのでしょうか。

まずは、画像がどのサイトに投稿されているかを調べて、それからサーバー会社に削除依頼を出します。早ければ1日で削除してもらえます。削除すること自体は簡単なのですが、海外のサイトに流出していることもあり、画像や動画を全て見つけ出すのは難しいです。ダウンロードしている人がまたアップすることもあるので、見つけ次第消していくしかないのが現状です。

ーーこれまで扱われた事案の中で、特に悪質だったケースを教えてください。

画像と一緒に名前や所属が書かれていると、悪質だと感じますね。顔や身体だけが画像や映像に出ていても、個人の特定は難しいですし、検索エンジンで名前を検索してもひっかかりにくいです。しかし、名前などの個人情報が一緒にあがっていると、個人特定のリスクが跳ね上がります。

リベンジポルノとは異なるのですが、本人に無断で、顔写真と一緒に携帯電話の番号などを載せて「連絡ください」とネット上に投稿しているケースもありました。被害者は、見ず知らずの人からおかしな電話がかかってきて初めて、被害に気づいたようでした。

ーー撮影した時点では同意していても、後になって「嫌だ」「消して欲しい」と思うこともありそうです。そんな場合、相手に黙って、スマホやPCに保存されているデータを勝手に削除することは法的に問題ないのでしょうか。

仮に自分の写真であったとしても、他人の端末を勝手に操作してデータを削除することは法的に問題となることもありえます。相手に自主的に消してもらうよう頼むのが本来の形ですが、実際には難しいこともあるでしょう。その意味で、安易に写真撮影に応じないということが重要です。

ーーリベンジポルノの被害を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

リベンジポルノに使われてしまいそうなわいせつな画像や動画を撮らせないことしか方法はないと思います。

スマホなどで撮影されてしまい、恋人と別れる時に削除を頼んだとして、その場では消してくれるかもしれませんが、コピーを隠し持っている可能性もあります。リベンジポルノの被害を防ぐには、やはり「撮らせない」という他なく、撮らせてしまったら相手の良心に期待することしかできないと思います。

とはいえ、寝ている間に撮られたり、性行為中に隠しカメラで動画を撮られていることもありますから、100%防ぐことは難しいです。

それでも、前述したように、万一流出してしまっても、対応方法はあります。辛い気持ちはわかります。しかし被害に気づいたら、拡散を食い止められるよう、削除に向けてできるだけ早く動いてほしいと思っています。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

中澤 佑一
中澤 佑一(なかざわ ゆういち)弁護士 弁護士法人戸田総合法律事務所
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。

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