「連日、深夜に階下から『トントン、ドンドン』と音がして睡眠障害になりました」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。
相談者は購入した分譲マンションの3階に住んでいます。ほぼ連日、深夜1〜5時の時間帯にだけ、下の階の住人が「トントントン」「ドンドンドン」と日曜大工をおこなっているような音がするそうです。
連日眠れないため、管理会社に相談をしたところ「張り紙くらいならできますが…」と、心許ない返事だったそうです。
相談者によると、階下には「元職人」のおじいさんが一人で暮らしているとのこと。「2カ月間、すべての時間を記録し、録音もしています。早急にやめてもらうには、どうすればいいでしょうか」と相談者は聞いています。
山之内桂弁護士の解説をお届けします。
●改善のために「個人」でできることは?
――このような騒音トラブルを解決するために、相談者はどのようなことができるでしょうか。
ご質問の騒音問題は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)6条1項に定める『共同の利益に反する行為』にあたる可能性があります。裁判例上、騒音・臭気・振動などの近隣迷惑を含むと解されています。
まずは直接、手紙なり訪問なりで、騒音防止を頼んでみましょう。
それで改善されなければ、受忍限度を超えるものとして、裁判所に「騒音差止の仮処分」を求めることも考えられます。
騒音の時間帯・程度内容からして、認められる可能性があります。
●頼みの綱は管理会社だけではない
――相談者は、可能であれば管理会社に対応を依頼したいようです。
頼みの綱は管理会社ではありません。管理会社は、管理委託契約に定められていることだけをすればよいからです。
マンション標準管理委託契約書11条2項では、共同利益違反行為の中止を求めても、相手が中止しないときは、管理会社は責任を免れ、その後は管理組合がすべきことになると規定しています。
お住まいのマンションの管理委託契約書の内容を確認してみてください。居住者間トラブルの解決は、管理業務に含まれていないのが通常です。
区分所有建物の管理・使用に関するルールは、管理組合が決め、運用します。分譲マンションは管理組合を立法・行政機関とする小さな村といえます。
そこで、個人として対応する方法のほかに、区分所有法(法57条以下)に従って、管理組合に「仮処分」等の対応をしてもらう方法があります。
集会決議が必要になるなど、ハードルは高いですが、最終的には、使用禁止・競売申立まで可能です。相手方が賃借人である場合にもほぼ同様の手段・方法で対処することになります。
なお最近は、マンション内での子どもの足音・生活音が問題になるケースもあるようです。
しかし、「共同利益違反行為」ではありますが、受忍限度の範囲内とされる可能性が高いため、仮処分は認容されない可能性が高いでしょう。
(弁護士ドットコムライフ)