居酒屋で用を足そうとしたら、トイレが1つしかなくて男女共用。「使用中」のため、待っていると、中から出てきたのが異性でなんとなく気まずい思いをしたーー。そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。
男女共用の客用トイレしか設置されていない飲食店は珍しくありません。また、店によっては、従業員も客用トイレを使います。
このように、居酒屋をはじめとする飲食店では、トイレを男性用と女性用に分ける必要はないのでしょうか。法的な問題について、村松由紀子弁護士に聞きました。
●飲食店では、客用と従業員用のトイレを分ける必要はない
ーー飲食店の男女共用トイレに問題はないのでしょうか
飲食店の営業には、都道府県知事の許可を必要としますが、許可が与えられるための施設の基準は、都道府県ごとに異なっています。これは、食品衛生法で、施設につき「条例」で基準を定めるとされているためです。
例えば、東京都の場合、トイレについて、「客の使用する便所があること」「調理場に影響のない位置及び構造とし、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫等の侵入を防止する設備を設けること。また、専用の流水受槽式手洗い設備があること」との規定はあります。
しかしながら、「男女を分けること」や「従業員用トイレと客用トイレを分ける」との規定はありませんので、分ける必要は無いということになります。その他の都道府県についても、多くは同様の規定になっているようです。
ただ、労働安全衛生法(及び同規則)は、「事業者」は、事業所のトイレを「男性用と女性用に区別すること」を求めています。つまり、飲食店が従業員を雇っている場合は、従業員用トイレは、男女を分けなくてはなりません。従って、仮にトイレを従業員と共用にした場合は、男女を分けなくてはならないという結論となります。
もう少しわかりやすく説明します。飲食店では、従業員と客が同じトイレを使っている場合は、男女を別にしなければなりません。一方、従業員と客のトイレを別にしている場合、従業員のトイレは男女に分ける必要があるものの、客用トイレは男女共用でも問題ないということになります。
●飲食店、トイレはお客様よりも従業員ファースト
少し意外な結論かと思いますが、飲食店については、あくまで「公衆衛生」、つまり清潔さの観点から規定がされています。一方、労働安全衛生法は、「快適な職場環境の形成」の観点から規定がされていることから、両者に違いが生じたと思われます。職場の方が長い時間を過すので、従業員に与える影響も大きいと考えられているのかもしれないですね。