家族連れでにぎわうファミリーレストランでも、緊迫感が漂うようなトラブルが発生します。そんな光景を目撃したという人から、弁護士ドットコムに情報が寄せられました。
きっかけは、配膳していた店員が、ソースの入った皿をすべらせてしまったこと。ソースがこぼれ落ちることはなかったのですが、衝撃ですこしだけ飛び散り、客の服とバッグにかかってしまったそうです。
その途端、客は威圧的な態度をとって、店員に対して「服とバッグのクリーニング代を出せ!」ともとめました。ただ、その汚れは、洗濯すれば落ちるようなレベルだったそうです。
そのうち、客は「洗って返せ!」ともとめるようになりました。そして、店員が「洗い終わったら連絡するのでとりに来てほしい」と伝えたところ、次のような言葉を言い放ったそうです。
「あなたたちがやったことなのに、私がとりに行かないといけないの?家に届けるべきよね?」
目撃者には、理不尽な要求に映ったようですが、法的には、どう考えればいいのでしょうか。森本明宏弁護士に聞きました。
●要求の「内容」「手段」から判断する
「度の過ぎた要求として、犯罪になったり、民事上の不法行為となりうる『不当要求』にあたるか否かは、要求の『内容』と『手段』の2点から判断します。
まず、その要求内容を根拠づける事実に乏しい場合は、不当な要求と判断すべきです。
そして、仮に、要求を根拠づける事実が認められ、要求内容が法的に正当であったとしても、その要求手段が、社会通念上常識的に認められる範囲を逸脱するような場合には、やはり不当な要求と判断をすべきです。
たとえば、脅迫的な言葉を用いる場合や、相手の業務に支障が生じるほどに常識の範囲を超えて頻繁に連絡をしてくるような場合です」
●強要罪にあたる場合も
「今回のケースですが、洗ったら落ちるような汚れであったとしても、店員がソースを飛び散らせてしまったことについて事実確認ができているのであれば、特殊クリーニングなどの高額のクリーニング代ではなく、通常のクリーニング代程度ならば、まったく支払いを免れることは難しいと考えます。
一方で、実際に家まで持っていく必要はありません。宅配便を利用するなどして送ることも考えられます。
ただし、相手が『モンスタークレーマー』(モンスターカスタマー)と疑われる場合、引き渡しのときの服の状況について、相互に確認しておくことが望ましく、どうしてもそれが叶わない場合には、せめて送付したときの写真を残しておくなど、あとで再度文句を言われないよう証拠保全は必須です。
先にも述べたとおり、要求の内容が法的根拠に乏しい場合や、一応根拠があったとしても、それを実現するための要求手段が逸脱している場合には、不当要求行為にあたります。刑法上の強要罪や、威力業務妨害罪などに問われる可能性があります」