埼玉県の学校法人「文理佐藤学園」の佐藤仁美学園長(44)が修学旅行に同行した際、カジノなどで経費を私的流用したと指摘されている問題で、仁美氏の父で同学園理事長である佐藤英樹氏が9月4日に記者会見を開き、仁美氏が2012年から2015年に海外出張した際、総額1482万円の不適切な支出があったとする調査結果を発表した。
報道された事例では、仁美氏は2014年11月、小学校の1週間の米国修学旅行に同行したが、約1カ月米国に滞在。ディズニーワールドやラスベガスのカジノを訪れていた。2015年2月にも、研修先の開拓の目的で渡米して、ミュージカルを鑑賞していたという。
佐藤理事長によると、仁美氏はすでに全額弁償しており、学園長の役職の辞任届を提出しているという。こうした私的流用について、犯罪に問われる可能性はないのだろうか。神尾尊礼弁護士に聞いた。
●業務上横領にあたる可能性
「業務上横領罪が成立する可能性があります」
神尾弁護士はこう指摘する。
「横領罪が成立するためには、『他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思』を要求するのが判例の理屈です」
今回のケースでは、どう考えればいいだろうか。
「旅費規定以上の支出があったことだけから、直ちにこのような意思があったとは言いにくいでしょう。
研修のために必要な支出の部分については、『学校のためにする意思がある』として、横領にはあたらない可能性があります。
しかし、少なくともカジノ等に行くことは生徒の研修とは無関係です。そうすると、やはり自分が楽しむために学園の費用を使ったと考えるのが自然です。
当然、業務上横領罪の成立も視野に入れるべきでしょう」
仁美氏は、既に流用分の返還しており、役職の辞任届を提出しているようだが、こうした事情は影響するのだろうか。
「そうした事情があったとしても、1000万円クラスの金額であれば、起訴される可能性は十分にあると考えます」
神尾弁護士はこのように指摘していた。