2014年12月07日 09時29分

「著作権にリスクゼロはない」福井健策弁護士が「他人の著作物」の報道利用を解説

「著作権にリスクゼロはない」福井健策弁護士が「他人の著作物」の報道利用を解説
著作権法を解説する福井健策弁護士

ネット上にあるコンテンツを使って「ニュース」を作ることは著作権法違反になるのか――。他人の文章や画像・動画を多用した記事をSNSで拡散させる「バイラルメディア」が流行するなか、インターネットと著作権について考える講演会が11月28日、東京都内で開かれた(主催:日本ジャーナリスト教育センター)。著作権の専門家である福井健策弁護士が、「報道」において著作物をどう扱えばいいかについて解説した。

●「時事の事件の報道のため」なら使える

著作権法では、著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」(同法1条)とされている。福井弁護士は、著作物として認められるか否かは、「創作性がポイントとなる」と解説する。たとえば、文章中のありふれた表現や事実、データなどは通常、創作性がないので、それだけでは著作物にあたらないという。

また、著作物といってもいろいろあり、映像表現に限ってみても、映画やテレビ番組から、個人が撮影してYouTubeに投稿した動画まで、多岐にわたる。福井弁護士によると、新聞やテレビなどのニュースメディアについては、一定の条件をみたせば、これらの素材を「無許諾」で利用できるという。その条件の一つとして、「時事の事件の報道のため」を挙げた。

「時事の事件を報道するために、その事件を構成したり、事件の過程で見聞きされる著作物を利用することができます(著作権法41条)」

このように福井弁護士は説明する。しかし、実際のメディアの現場では、その素材が「報道のため」に使ってよいものなのか、使ってはいけないものなのか、判断するのは非常に難しい。

●報道とは何か?「深堀りされておらず、大した基準はない」

講演会の参加者からは「そもそも報道とは何か?」という根本的な質問も出たが、法的には「判例もほとんどなく、学説でもあまり深堀りされていないので、実は大した基準はない」(福井弁護士)という。

福井弁護士は「(利用する著作物が)ニュース性を喪失してしまえば、時事の事件の報道とはいえなくなると思います。1年はおろか数カ月経つと厳しくなるでしょう」との見解を示した。

しかし、ニュース性が失われたかどうかは、判断が難しい「あいまいな領域」だ。結局、ネット上の素材をどう扱うべきなのか。福井弁護士は次のようにアドバイスした。

「著作権法では、白か黒かはっきりわかれるものはめったにありません。完全に白のものしか使いたくないなら、メディアとしてできることは、きわめて限られるでしょう。

もちろん、目の前の法的リスクが大きかったらやってはダメですが、必要なのはリスクゼロというフィクションではなく、リスクの大きさを測って、それを超えるメリットがあったときに、リスクをとれるかということです」

(弁護士ドットコムニュース)

福井 健策(ふくい・けんさく)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部・神戸大学大学院 客員教授。内閣府知財本部委員ほか。「18歳の著作権入門」(ちくま新書)、「誰が『知』を独占するのか」(集英社新書)、「ネットの自由vs.著作権」(光文社新書)など知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。Twitter:@fukuikensaku
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