京都市は5月9日、自宅など空き部屋を旅行者に貸して、ホテル代わりに利用する「民泊」の実態調査結果を発表した。京都市のウェブサイトに掲載された調査結果によれば、市が8社の仲介サイトで確認した2702件の登録のうち、旅館業法の許可を得ていると確認できたのは、全体の7%にあたる189件だった。68.4%にあたる1847件については、無許可営業であることが推測されるという。
京都市では、「自宅の一部を提供するよう場合であっても、『宿泊料とみなすことができる対価を得て人を宿泊させる業を営む場合』には、旅館業法第3条に基づく許可を受ける必要があります」(ウェブサイトより)としている。
今後、民泊はどうあるべきなのか。改善策について、京都市で空き家問題に取り組んでいる中島宏樹弁護士に話を聞いた。
●小手先の要件緩和では対応しきれない
「外国人観光客の増加等を原因として、京都市をはじめ、全国の観光地で宿泊施設が不足しており、そのため民泊への需要が増しています。他方で、大半の施設は旅館業法等の関係法令に基づく許可を得ておらず、宿泊客がマナーを守らないなど、様々な問題が発生しています。地元住民や業者との摩擦、治安上の問題が発生する恐れも無視はできません」
具体的に、どのような問題が起こっている、あるいは、起こりうるのだろうか。
「火災や震災など、災害発生時に宿泊客の把握ができない、保険が適用できない、
不法滞在者の隠れ家となる、感染症発症時の感染経路特定や被害拡大防止ができない、といった問題が考えられます。
また、マンションなどの集合住宅では、不特定多数人が出入りしたり、宿泊客が居室や共用部分で騒いだり、共用部分を占領したりするなどして、既存住民との間で問題を引き起こしています。場所によっては、不特定多数人を有料で居室に宿泊させる行為を禁止する旨の管理規約や使用細則を作成し、民泊を禁止しているところもあるようです。
さらに、既存の宿泊施設は、費用や時間といったコストをかけて、旅館業法上の許可要件をクリアしていますが、旅館業法等の関係法令に基づく許可を得ていない民泊は、それらのコストをかけていません。両者との間で価格競争が激化すれば、価格が安い方に軍配があがり、既存の宿泊施設の経営が成り立たなくなる恐れもあります」
今後、どのような対応が求められるのだろうか。
「許可を得ている割合が低いのは、旅館業法等の関係法令に基づく許可要件をクリアすることが難しいことが一因となっています。
現状、ネックになっているのは、面積要件のみならず、有人フロントの設置義務、トイレの個数、建築基準法・消防法関係など、多岐にわたっており小手先の要件緩和では対処しきれないと思われます。
他方で、2020年の東京オリンピック開催を控え、今後も、外国人観光客の増加に伴い宿泊施設が不足する状況が続くことが予想されます。
現在、東京都大田区や、大阪府・大阪市では、国家戦略特区及び民泊条例を利用した枠組みが整備されつつあります。
今後は、上記の問題点を踏まえ、慎重に、それでいて、迅速な、新たな枠組み作りが求められているといえます」
中島弁護士はこのように話していた。