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隣家に「ドーベルマン」が引っ越してくる・・・「怯える隣人」にできることは?
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隣家に「ドーベルマン」が引っ越してくる・・・「怯える隣人」にできることは?

住宅街に暮らす者にとって、隣家にどんな人物が住んでいるかは重要な問題だ。ある女性は、新しい隣人に思わぬ「家族」がいることを知った。「新しく引っ越してくる隣人が、ドーベルマンを飼育しているそうです。うちは子供がまだ小さいので、不安で仕方ありません」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーで、そんな心情を打ち明けた。

相談者は、一戸建て住宅が約10軒ならんだ分譲地に住んでいる。個々の敷地をさえぎるフェンスなどがなく、隣同士が開放的な造りなのだという。新しい入居者からは「完全室内犬として、自宅から出さずに育てるから大丈夫」と言われているそうだ。

しかし、ある芸能人夫妻が飼うドーベルマンが、同じマンションの住人を噛んだ事件もあった。何をもって「大丈夫」といえるのか、不安が募っている。「本当は引っ越してきて欲しくないのですけど、せめて、フェンスを作るなど、環境を整えてもらえないでしょうか?」という。山之内桂弁護士に話を聞いた。

●責任をもって動物を飼うことが求められている

「動物愛護管理法は、生活環境の保全・迷惑防止を飼主に求めています。これをうけた『環境省告示』でも、飼主は、人の生命、身体・財産・生活環境を害さないよう、責任をもって動物の飼養・保管に努めることとされています」

もし、飼い犬が暴走してしまった場合、飼い主はどんな責任を問われるのか?

「動物の飼主が、管理過失により他人の権利を侵害すると、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法718条)。

飼主が管理責任を果たさない場合、近隣住民は、行政に指導を求めたり、人格権ないし所有権に基づく妨害予防請求として、飼主に対して、逸走防止のための檻(おり)・柵などの設置を、裁判上あるいは裁判外で、求めることができます」

●日本では飼える犬種に制限はない

また、山之内弁護士によれば、独自に条例で規制をおこなっている自治体もある。

「多くの自治体では、動物愛護管理条例を定めて、一定の行政指導をしています。ただし、危険な犬種を条例で定めて、特別の規制をする地域は限られています(茨城県、佐賀県)。

イギリスでは、法律で闘犬(ピットブルテリア、土佐犬など)を飼うことが、原則として禁止されていますが、日本では飼える犬種に制限がありません」

ちなみに、茨城県では秋田犬、土佐犬、ドーベルマンなどを「特定犬」に指定。「檻」の中で飼うことや「特定犬」である旨の標識を掲示することを求めている。

最後に、山之内弁護士は次のように語った

「きちんと社会化トレーニングを受けた犬が、むやみに人に危害を加えることは少ないものです。飼主が責任をもって、動物を管理すべきことは当然です。他方、飼主でない人も、動物の生態を知って、危害を招かないよう、お互いに配慮することが必要かと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山之内 桂
山之内 桂(やまのうち かつら)弁護士 梅新東法律事務所
1969年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学法学部卒。司法修習50期、JELF(日本環境法律家連盟)正会員。大阪医療問題研究会会員。医療事故情報センター正会員。

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