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「夜中もキラキラして落ち着かない」 自宅イルミネーションは「光害」なのか?
キラキラと輝くイルミネーションが街のムードを盛り上げているが・・・

「夜中もキラキラして落ち着かない」 自宅イルミネーションは「光害」なのか?

今年もあと少し。年の瀬を迎えると、クリスマスソングと並んで、キラキラと輝くイルミネーションが街のムードを盛り上げる。最近では、自宅に電飾イルミネーションをつける人も多い。なかには、趣向を凝らしたイルミネーションで有名になり、ちょっとした「観光地」になっている家もあるという。

しかし近所の人は、あまりにも張り切りすぎた「傑作」に、うんざりしているかもいるかもしれない。実際に、あるQ&Aサイトには「個人のイルミネーションはどこまでなら許されるのでしょうか」といった相談も寄せられている。せっかくのイルミネーションも、ご近所とのトラブルに発展してしまえば、台無しだろう。

では、自宅をイルミネーションで飾る場合、どのようなことに注意すればいいのだろうか。大阪弁護士会の公害対策・環境保全委員会の委員をつとめる山之内桂弁護士に聞いた。

●近所トラブルの判断基準となる「受忍限度論」

実は、このようなイルミネーションなどの人工光をめぐるトラブルは「光害」と呼ぶそうだ。その対策のためのガイドラインが、環境省によって公表されているのだという。

「環境省のガイドラインでは、過剰な人工光が、生態系・天体観測・交通管制等に悪影響を及ぼしたり、眩しさ等の被害を生じさせることが指摘され、照明器具の選択や設置方法等、配慮すべき点が具体的に述べられています」

このように山之内弁護士は説明する。そのうえで、「光害」による近所トラブルが起きたときの考え方について、次のように述べる。

「光害が裁判で問題とされる場合は、『受忍限度論』によって判断されます。

受忍限度論とは、『一定の社会の中で互いに接触し、影響しあう関係にあるから、お互い様と思える限度までは我慢しましょう。一般的にほとんどの人が我慢の限界を超えると考える程度でなければ、加害者に対して加害行為の差止や、損害賠償を請求することはできません』という考え方です」

逆にいえば、一般的に我慢できる限度を超えれば、損害賠償を請求できたりするということだ。

●環境省の「光害対策ガイドライン」が参考になる

「どの程度になれば『受忍限度』を超えたといえるのかは、周辺の環境や被害側・加害側の個別事情を総合的に判断して決めることになります。

過去の裁判例を見ると、光害に対する損害賠償や差止等が認められるのは、かなり難しいといえますが、法的な責任がなければ何をしてもいいという考え方はトラブルの元ですので、くれぐれも近隣の生活環境との調和を考えて、自主的に障害光を抑制するべきです」

実際にイルミネーションを飾り付けようとするときには、環境省の「光害対策ガイドライン」を念頭におくとよいでしょう、と山之内弁護士はいう。

「たとえば、このガイドラインでは、国際照明委員会(CIE)の基準が参考に示されており、街中の住宅地や商業地での夜間窓面の明るさの許容最大値は、10~25ルクスとされています。ちなみに、20ルクスとは『10m先から人の顔や行動がだいたいわかる明るさ』と言われています。

この数値よりも近隣の窓辺が明るくなってしまうような電飾や、フラッシュのように点滅して極端な明暗差を生じる電飾等は避けるべきでしょう」

さらに、人が寝静まる深夜には、より厳しい基準が設けられているという。

「通常消灯すべき時間帯は、許容最大値が2~4ルクスとされています。これは、暗くなると自動点灯する照明機器が作動点灯する程度の明るさです。

消灯時間について特段の法規制はありませんが、貸金業法施行規則や特定商取引法通達が午後9時以降の営業活動を原則禁止していることからすれば、住宅地では、遅くとも午後9時までには電飾を消灯すべきと思います」

冬のイルミネーションは人の心を楽しませてくれる一方で、度を超えてしまえば、周囲の人々に迷惑をかけてしまう。くれぐれも「光害」だなんて言われないように、節度をもった飾り付けを心がけたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山之内 桂
山之内 桂(やまのうち かつら)弁護士 梅新東法律事務所
1969年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学法学部卒。司法修習50期、JELF(日本環境法律家連盟)正会員。大阪医療問題研究会会員。医療事故情報センター正会員。

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