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ペットショップで買った犬に「先天性疾患」 1年以内なら「損害賠償」を請求できる?
愛犬に病気があると知ったらショックだろう

ペットショップで買った犬に「先天性疾患」 1年以内なら「損害賠償」を請求できる?

ペットショップで犬を購入したら、あとで先天性の疾患があることが分かった。そんなとき、店に対して治療費などを請求できるのか——。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、悩める飼い主から質問が寄せられた。

相談者は、1年数ヵ月前にペットショップで犬を購入したが、しばらくたって、犬に先天性の疾患があることがわかったという。しかし、契約書には「先天性等の病気があることがわかった場合には『交換』での対応しかしない」と記載されていたそうだ。

相談者は「交換」ではなく、損害賠償を求めて店を提訴したいという。ただ、犬の購入から1年以上が経過しているため、訴えるには不利なのではないかと心配している。

ペットショップで購入した動物に、先天性の疾患があるとわかった場合、店に対して損害賠償を請求できるのだろうか。購入から時間が経っている場合でも可能なのか。ペットに関する法律にくわしい鈴木智洋弁護士に聞いた。

●売り主には「瑕疵担保責任」がある

「犬のような動物は、民法上は『物』として扱われます。ペットショップで犬を購入する行為は、法律上は『物の売買契約』ということになります」

鈴木弁護士はこう切り出した。

「売買契約について、民法では、売り主に『瑕疵担保責任』を定めています。瑕疵とはキズや欠陥のことです。購入した物に、パッと見ただけでは分からない瑕疵があった場合、買った人は、売り主に対して損害賠償請求などができます。

瑕疵担保責任が追及できる期間は、瑕疵の存在を知ったときから『1年以内』です。本件では、犬を購入してから1年数ヵ月たっているようですが、先天性疾患があると気付いてから1年以内であれば、問題ありません」

●「交換での対応しかしない」契約も可能

となると、犬を買った人は店に損害賠償を請求できるのか。

「そう思いたいところですが、本件の場合、売買契約書に『先天性等の病気があることがわかった場合には、交換での対応しかしない』と書かれていた点が問題です。

瑕疵担保責任については、当事者間で民法の定めと異なる合意をすることができます。つまり、『損害賠償ではなく、交換での対応しかしない』という契約も可能ということです。

相談者と店との間では『交換での対応しかしない』という合意がなされているので、売主は、疾患がない犬と交換することでしか瑕疵担保責任を負わないことになります。したがって、本件の場合、店に対して損害賠償を請求することはできません」

お金を請求できないことに、納得しない人もいそうだが・・・

「気持ちは分かりますが、法律上は仕方ありません。このような事態を防ぐためにも、購入の際には、契約書の内容をよく確認することをお勧めします」

鈴木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鈴木 智洋
鈴木 智洋(すずき ともひろ)弁護士 弁護士法人後藤・鈴木法律事務所
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会・日本法獣医学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授、名古屋市獣医師会顧問弁護士も務めている。

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