振り込め詐欺をおこなう「反社会的勢力」と関わりをもったとして、お笑いコンビ「カラテカ」の入江慎也さんが6月上旬、所属事務所の吉本興業から契約を解除された。複数の吉本芸人を巻き込んだ騒動に発展している。
きっかけは、写真週刊誌「フライデー」(講談社・6月7日発売)のスクープ。宮迫博之さんなど、複数の吉本芸人たちが2014年12月、振り込め詐欺グループの忘年会に参加したが、入江さんの仲介で、事務所を通さない「闇営業」だったというのだ。
入江さんは6月6日、自身のツイッター上で、忘年会に出席したことは事実と認めながらも「詐欺グループの忘年会であるとは本当に知りませんでした」とつづっている。一般論として、反社会的勢力と付き合ったら、法的に問題はあるのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。
●「ただちに違法ではないが、社会的信用を失うというデメリットがある」
――そもそも反社会的勢力とは何でしょうか?
『暴力、威力と詐欺的手法を駆使して、経済的利益を追求する集団または個人』とされています。
具体的には、暴力団や暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団などです(属性要件)。
こうした属性要件だけでなく、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為をおこなう者も、反社会勢力です(行為要件)。この行為要件にも着目することが重要だといわれています。
――反社会的勢力と「付き合う」ことのデメリットや法的な問題点はどうでしょうか?
たとえば、暴力団対策法や暴力団排除条例は、暴力団との「付き合い」そのものを違法としているわけではありませんが、暴力団を社会から排除していくことを要請しています。それは反社会勢力についても同じです。
だからこそ今日、多くの企業が、企業倫理として、暴力団をはじめとする反社会的勢力と一切の関係をもたないことを掲げています。それはコンプライアンス重視の流れにも沿うわけです。
そんな中で、反社会勢力と「付き合う」のは、ただちに違法でないとしても、コンプライアンスを軽視していると取られ、さらには社会的信用を失うというデメリットが生じます。無論、今はうまく「付き合い」していても、反社会的勢力に食い物にされるリスクも潜在的にあります。
――反社会的勢力に取り込まれないためにどうすればいいでしょうか?
何よりも、反社会的勢力と一切の関係をもたない、という強い意識・姿勢が重要です。
そのため、相手が反社会的勢力であるかどうかについては、前述の「属性要件」「行為要件」を念頭に置いて、常に必要と思われる注意を払うことです。
仮に、万が一、反社会的勢力とは知らずに何らかの関係をもってしまった場合には、相手が反社会的勢力であると判明した時点や、その疑いが生じた時点で、すみやかに関係を解消すべきでしょう。