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冤罪被害者「取調べの一部可視化では冤罪はなくならない」刑訴法改正案の廃案訴える
記者会見で刑訴法改正案の廃案を訴える「冤罪被害者」たち

冤罪被害者「取調べの一部可視化では冤罪はなくならない」刑訴法改正案の廃案訴える

警察と検察による取り調べを録音・録画する「可視化」の義務付けなどを盛り込んだ刑事訴訟法の改正案が、参議院法務委員会で審議入りしたことを受けて、布川事件で再審無罪となった桜井昌司さんら冤罪被害者4人が4月20日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、改正案の廃案を訴えた。

改正案は昨年に衆議院を通過し、今国会で成立する可能性が高まっている。現在、密室でおこなわれている取り調べが可視化されることで、取調官による暴力や自白の誘導、強要などによる「冤罪被害」の防止につながると期待されている。

一方、今回の法案では、可視化の対象となる事件について、殺人などの重大事件と検察の独自捜査事件に限定している。さらに、可視化となった事件についても、逮捕に至っていない任意の取り調べ段階は録音・録画されないため、「全面可視化ではなく一部可視化」と批判する声も根強い。桜井さんたちも「一部可視化では、今より冤罪が起こりやすくなる」と反対の立場を示している。

●「警察の都合のいいようにできる」

桜井さんは会見で「朝から晩まで、狭い留置場の取調室で責め立てられたら、だいたいの人が心を折れてしまう。私たち(桜井さんと故・杉山卓男さん)の自白テープを聞けばわかるが、見事に『犯人』を演じている。不確かな裁判となる一部可視化はすごく怖い」と話した。

また、警察がねつ造した選挙違反事件「志布志事件」の冤罪被害者、川畑幸夫さんは「自分の体験からいうと、任意の取り調べは名ばかりだ。取調官はガンガン机を叩いたり、優しくいったりして自白をとっていく。一部可視化が(冤罪をなくすための)一歩前進だといわれているが、警察の都合のいいようにできる。全面可視化しないと冤罪はなくならない」と訴えた。

桜井さんは4月19日、参議院法務委員会に参考人として呼ばれて発言した。また、桜井さんらは20日午後、冤罪被害者12人の連名による申し入れ書を日本弁護士連合会の中本和洋会長に提出して、今回の刑訴法改正案の廃案に向けて行動するように求めた。

(弁護士ドットコムニュース)

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