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「走る列車」に飛び乗る「自撮り動画」が話題・・・日本でやったら罪に問われるか?
列車の屋根に乗る様子を撮影した動画が話題になっている

「走る列車」に飛び乗る「自撮り動画」が話題・・・日本でやったら罪に問われるか?

18歳の若者が走行中の列車の屋根に飛び乗り、車両から車両へ移っていく――。そんな様子を自分で撮影した動画が8月下旬、動画サイト「YouTube」に投稿されて、話題になっている。911日までに400万回以上も再生されている。

英国のニュースサイト「デイリー・メール」によると、投稿したのは、ウクライナ人の18歳の青年だ。動画には、男性がフェンスを乗り越えて、駅の建物から列車の屋根に飛び乗る様子が映っている。

さらに、列車が走行中であるにもかかわらず、青年は車両から車両へと屋根の上を移動していき、撮影を続ける。画面には、列車の屋根から見た風景が、流れるように映し出される。最後は、車両間のデッキに降り立ち、次の駅に着くと、何事もなかったかのようにホームから去っていくのだ。

怖いもの知らずの青年は途中、興奮気味の表情を見せたり、ガッツポーズなんかもしている。全体的に、スピード感や爽快感があふれて「カッコイイ」ような気もするが、もし日本でやったら、何らかの罪に問われるのだろうか。前島憲司弁護士に聞いた。

列車の屋根に乗るのは「鉄道営業法」違反

「列車の屋根に乗ったり、デッキに乗ったりする行為は、鉄道営業法の『列車中旅客乗用ニ供セサル箇所ニ乗リタルトキ』(同法333号)にあたり、違法です。2万円以下の罰金または科料(1万未満)に処せられます」

前島弁護士はこのように述べる。思ったより「軽い罰」という印象も受けるが、前島弁護士は「これだけでは終わりません」と付け加える。

「ほかにも、威力業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

列車の運行に危険を生じるくらい悪質な場合は、鉄道往来危険罪(2年以上の有期懲役)に問われることもありえます」

今回の動画を見る限り、青年は改札を通らずに「無賃乗車」をしているように見えるが、この点はどうか。

「もし無賃乗車をしていれば、別に鉄道営業法による罰金または科料の制裁があります。また、正規乗車のふりをして駅員に入出場させた場合、詐欺罪の成立もありえます。

そして、問題は刑事罰だけにとどまりません。列車の運行が停まったり、遅れたりした場合、多額の損害賠償請求を受けることもあります」

このように述べたうえで、前島弁護士は次のように警鐘を鳴らしていた。

「刑務所に行くことやお金の問題よりも、転落や架線に触れることによる感電で、ケガをしたり、命を失うこともあります。

ちょっとしたいたずら心で、人生を棒にふることになりますので、絶対にマネしないでください」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

前島 憲司
前島 憲司(まえじま けんじ)弁護士 弁護士法人前島綜合法律事務所
神奈川県弁護士会所属・横浜家庭裁判所・家事調停委員。弁護士になる前に裁判所書記官として10年以上勤務した経験がある。商工会議所の役員やロータリークラブに所属するなどして地域経済に貢献する活動も行っている。鉄道模型や鉄道に乗る「乗り鉄」など鉄道趣味のほか、日本史や神社の歴史をたどるのも好き。

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