「無期懲役は予想を超える厳しい内容」
安倍晋三元首相を銃撃し殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告人に対し、奈良地裁の裁判員裁判は1月21日、無期懲役の判決を言い渡した。
これを受けて、旧統一教会の問題に取り組んできた弁護士らが同日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。
弁護士らは「山上被告人が育った環境をつくってしまったのは政治や社会の責任」と指摘し、裁判員裁判でそうした事情が十分に酌量されていないことに遺憾の意を表した。
●「山上被告人一人に負わせることが妥当なのか」
この日会見したのは、旧統一教会などの問題に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会のメンバーだ。それぞれの立場から、判決に対する受け止めを語った。
木村壮弁護士は、山上被告人が統一教会問題の影響下で、幼少期から非常に不遇な環境で育ってきたことに言及した。
「母親が入信し、家族との間で心の通った対話ができないまま生活せざるを得なかったことが大きかったのではないかと思っています。そうした家庭を数多く見てきましたが、山上被告人の家庭も同様だったのではないでしょうか」
そのうえで「そうした環境に、山上被告人は強い絶望感を感じていたのではないか。犯罪は極めて重大で、刑罰を受けるのは当然ですが、こうした環境を生んだ社会や政治家の責任も含め、罪のすべてを被告一人に負わせることが妥当なのか、改めて考える必要があると思います」と述べた。
●「山上被告人は要領が悪く、優しい人物」
検察側の求刑通りの量刑となった背景について、紀藤正樹弁護士は「(被害者や遺族への)謝罪がないケースにおいて、求刑と同等の量刑になることはあります。今回も、山上被告人から夫人である安倍昭恵さんへの謝罪がなく、反省があまり見られないことが、無期懲役につながったとみています」と見解を述べた。
一方で、判決の問題点も次のように指摘した。
「幼少期における統一教会の影響力は認めつつも、青年期以降には認めていない。幼少期の児童虐待は青年期に大きく影響します。今回は裁判員裁判ということもあり、審理が拙速となってしまい、裁判所が理解に達していなかったのではないか」
また、山上被告人と接見したこともある山口広弁護士は「山上被告人はとても要領が悪く、優しい人物」と評し、犯行に至った経緯についてこう述べた。
「入信した母親と家族の軋轢が激しくなる中で、山上被告人の兄が自殺してしまいました。しかし、山上被告人は母親の話を聞きながらも、やめるように説得することができず、どうしたらいいのかわからずに追い詰められてしまった。
そうした彼の環境について、正しく裁判官や裁判員に伝わらなかったことが非常に残念です。大阪高裁で判決が見直されることを願っています」
●「旧統一教会の問題が明らかになっていれば」
飯田正剛弁護士は、無期懲役判決に「私の予想を超える厳しい内容。宗教2世に対する考察が不十分で、非常に冷たい判決だと思います」と述べた。
そして「2世問題について、弁護人から立証はされたと思うが、判決では理解されていない。裁判所には、2世問題をどう思っているのかあらためて問いたいです。社会の一員として責任があったのではないか。そういう反省がこの判決にはありませんでした」と批判した。
さらに中川亮弁護士は、旧統一教会と政治との関係について、あらためて問題視した。
「犯行の最後の決意に至る重要な契機が、安倍元首相による統一教会関連団体へのメッセージだったのではないかという点です。
当時、私たちはそのメッセージに抗議し記者会見もおこないましたが、ほとんど報道されず、社会的に問題化されませんでした。
もし当時、統一教会問題や政治との関係、2世の置かれた状況が社会的に明らかになっていれば、彼が犯行を決意することもなかったのではないかとすら思います」
そのうえで「こうした経緯を踏まえると、若くして悲惨な境遇に置かれた彼にすべてを押し付ける無期懲役という刑が本当に相当なのか、非常に疑問を感じた、というのが率直な感想です」と述べた。
●高市早苗首相らに公開質問状
連絡会は同日、2月8日におこなわれる総選挙を見据え、高市早苗首相を含む与野党の代表者に対して、旧統一教会に関する公開質問状を送付したことを明らかにした。
公開質問状では、一部政治家と旧統一教会との関係が、結果として安倍元首相殺害という事態を招いたとして、痛恨の意を表明。
「旧統一教会と所属議員の金銭支援への対処」や「旧統一教会との関係性について第三者委員会を設置して調査する必要性について」などについて、各党の考えを問うている。
回答は、総選挙の公示が予定されている1月27日に公表する予定としている。