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「裸にして山に埋めようか」 人違いの被害者を暴行・監禁、「命乞い」されても解放しない闇バイトたちの悪行
東京地裁(渋井哲也撮影)

「裸にして山に埋めようか」 人違いの被害者を暴行・監禁、「命乞い」されても解放しない闇バイトたちの悪行

次々と発生して、摘発されている闇バイト事件。強盗などの凶悪犯罪に加担するとは知らずに応募してしまうと言われているが、これに加えて事件を起こしてみたら、被害者は「人違いだった」というケースもある。

東京都練馬区の路上で今年9月、40代の男性を監禁したなどとして、闇バイトのメンバーが逮捕された事件だ。このうち二人の公判が11月22日、東京地裁であった。被告人らは起訴事実を認め、検察側は懲役3年を求刑した。(ライター・渋井哲也)

●指示役とXでつながり、シグナルで指示された

起訴状や冒頭陳述によると、根本雄也被告人(32)と佐藤大稀被告人(37)は、Xを通じて、いわゆる指示役の「氏名不詳の人物」とつながった。

二人は9月10日、秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」(Signal)で、この人物からコンビニの駐車場に集合するよう言われた。

根本被告人は自動車を運転し、集合場所へ向かい、佐藤被告人は合流したあと、氏名不詳の人物から「バールで殴り、車に押し込めるように」と指示された。

二人はさらにシグナルを通じて「違法薬物を持ち出されたので捕まえるように」とも命じられた。

●あとから「ターゲット」と別人とわかった

一方、被害者の男性Aさんは当日、ミシマという人物に「練馬区の駐車場に来てほしい」と呼び出された。駐車場に着くと、一台の自動車が走り出した。

ミシマが乗っていると思って近づいたところ、Aさんは手首を掴まれて、佐藤被告人を含む三人に襲われた。

佐藤被告人に後頭部をバールで殴られたほか、身体を木刀でも殴られた。逃げ出したが、追いかけられて、根本被告人が運転する自動車に押し込められた。

その後、メンバーたちが、氏名不詳の人物と「シグナル」で会話していると、実は、Aさんがターゲットの人物とは別人だったと判明した。

しかし、Aさんはすぐに解放されることはなかった。

駐車場でAさんを押し込む様子を目撃した女性から110番通報があり、警察が探していたところ、およそ5時間後、江戸川区の駐車場で見つかった。

その場にいた根本・佐藤被告人らは現行犯逮捕された。Aさんは全治2カ月の重傷を負っていた。

●身分証を出してお金に困っていたから断れず

11月22日の公判で、二人は起訴事実を認めた。

根本被告人は借金があったことで応募した。闇バイトだと認識しており、当初は「運び」の仕事だと思っていたが、共犯者と合流してから、ターゲットを暴行して監禁することを知ったという。

「Aさんのことを薬の売人だと思っていました。暴行し、監禁することを断れなかったのは、身分証を出していましたし、お金に困っていたから」

報酬はいくらと聞いていたのだろうか。

「5万円と聞いていました。しかし、被害者を監禁していたため、途中から15万円につり上がりました。被害者を引き渡すときに報酬をもらえるという話でしたが、現行犯逮捕されたので、もらっていません」

根本被告人は車の運転をしていたことから、Aさんに対する暴行には直接関わっていない。しかし、Aさんの腕を掴んだことを認めた。

「(被害者が)車から降りられないように、逃げないように腕を押さえました。それにケガをするかもしれないというのもあった。自分で判断しました」

●「逃げたら殺す」と脅されていた

佐藤被告人は、Xで「ホワイト案件」という仕事を見つけて応募した。

「闇バイトの仕事とは思っていませんでした。何をするかも聞かされていませんでした。報酬も聞いていません。ただ、集合したあとの車内で『薬物を売買する人がいるから捕まえてほしい』と指示されました。

移動中に(報酬は)50〜60(万円)と言われました。どこまでの仕事をするのかはわからなかったのですが、報酬額が高いので、『危ないことをするんだな』とは思いました」

しかし、佐藤被告人は「案件」を拒否することはなく、結局、Aさんをバールで暴行して、車内に押し込めるという役割を果たすことになる。

「ほかの集まっていた人は『今日はタタキだよ』と言っていました。暴行をすることを知り、頭が真っ白になったので、何も考えられませんでした。

車内の後部にはバールと木刀がありました。指示されたときには、めちゃめちゃ嫌だなと思いました。

しかし、身分証を出していましたし、被害者を見つける前に『逃げたら殺す』と名前の知らない人物から言われていました」

●命乞いをしたが、解放されなかった被害者

この日の公判では、Aさんの意見陳述も読み上げられた。

「私は当日まで、平穏な日々を過ごしてきました。そんな中、犯人は、私をサンドバックと勘違いしているのか、最後は右足を折られました。

押し込められた車内で指示役が電話をしてきたとき、人違いだとわかりました。しかし、『裸にして山に埋めようか』と話していました。命乞いをしたのですが、解放しようとはしていませんでした。

何も悪いことをしていないのに、絶望感を抱きました。今も、外を歩いていると、すれ違う人が襲ってくるのではないかと思い、人通りが少ないところを歩きます。

やるせなく、苦しく、頭がおかしくなりそうです。私は理不尽に事件に巻き込まれました。2カ月以上の治療生活をしなければならない。決して許すことができません。厳正な処罰をしてほしい」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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