茨城県守谷市の常磐茨城県守谷市の常磐道で、あおり運転をして相手の男性を殴って負傷させた事件で、傷害容疑で逮捕された会社役員の男性が再逮捕されたと報道されている。新たな容疑は、「強要罪」で、あおり運転を強要容疑で立件するのは、全国初とみられる。
あおり運転については、直接取り締まる法律はなく、これまでは道路交通法違反や暴行罪が多く適用されてきた。再逮捕された会社役員は8月10日、常磐道で数キロにわたり、20代男性の運転する乗用車に対し、蛇行運転や急ブレーキなどのあおり運転を行った上、進路をふさぐなどの暴行を加え、止まる必要のない乗用車を停止させた疑いがある。傷害容疑について、水戸地検は9月8日、「処分保留」としたという。
では、今回の再逮捕容疑となった「強要罪」とはどのような罪なのだろうか。裁判官出身の田沢剛弁護士に聞いた。
●「量刑を重くするために、強要罪というものを持ち出した」可能性
最初の逮捕容疑「傷害罪」やこれまであおり運転に多く適用されてきた「暴行罪」に比べ、今回の逮捕容疑「強要罪」はどのような罪なのだろうか?
「刑法223条1項に『生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する』と定められており、これが強要罪です。
暴行罪や傷害罪が人の身体の安全を保護法益としているのに対し、強要罪は人の意思決定の自由及び身体活動の自由を保護法的としていること、法定刑も、暴行罪や傷害罪では、罰金刑も選択できることになっているのに対し、強要罪では、罰金刑を選択する余地がなく、懲役刑のみとなっていることが大きな違いです」
水戸地検は傷害容疑について「処分保留」としているが、より重い「強要罪」で起訴できる可能性はあるのだろうか。
「『強要罪』で起訴できる可能性があるのか否かはなんともいえませんが、社会的に大きな関心を呼んだ事件であることに照らすと、『強要罪』で起訴する可能性自体は否定できません。
傷害容疑について『処分保留』としたからといって、『傷害罪』について起訴しないことが決まったわけではありません。強要罪でのみ起訴して、傷害の部分を不問に付するということはおよそ考え難いからです。
傷害罪のみ問うとなると、従来の量刑相場からいって、それほど重い刑罰を科すことができないと判断した捜査当局が、量刑を重くするために、罪として考え得る強要罪というものを持ち出したというのが本当のところだと思います」