茨城県守谷市の高速道路で起きたあおり運転事件で、車に同乗していた女性被疑者と似ているとして、デマを流され、誹謗中傷を受けた都内在住の女性Aさんが8月23日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
8月16日に男性が指名手配され、氏名が明らかになった後から、Aさんのインスタグラムには「さっさと自首した方が身の為」「ガラケーババア!」など罵詈雑言が書き込まれ、Aさんが代表を務める会社には8月17日だけで280件の電話が殺到した。
Aさんは「いつ誰の身に起きてもおかしくない。そうなった時にどう対応するのが正しいのかという知識をあらかじめ持っていないといけないなと思った」と振り返り、「拡散の恐ろしさを感じた。軽い気持ちでリツイートしただけだから関係ないではなく、しっかり考えてほしい」と話した。
●女性「なんで?という思い」
男性被疑者がインスタグラムでAさんをフォローしており、映像にうつった女性被疑者とサングラスや服装が似ているという理由だけで、Aさんは「ガラケー女」とデマを流された。
Aさんは17日朝、起床後に友人から連絡があり、自身の名前や顔写真がインターネット上に出ていると知った。まさか自分のことだと思えず、「なんで?という思いが、まず一番最初にあった」。状況が読み込めず、どうしてこうなっているか、また今後どうなるのか分からず、パニック状態だったという。
「(誹謗中傷の書き込みで)悪質な表現をする方が多くて、精神的ダメージも大きかった」。インスタグラムが男性被疑者からフォローされていたことについては「本当に知らない方ですので、なんでフォローされたのかは分かりません」と話した。
●法的責任を追及へ
代理人の小沢一仁弁護士は、今回のデマ騒動に関して、
(1)最初にデマ情報を流した人、
(2)不適切な言葉を用いて情報を積極的に拡散した人、
(3)リツイートのみした人、
(4)まとめブログ運営者、動画配信者、
(5)騒動に便乗し、容姿を誹謗するなど無関係の事柄で被害女性を貶めた人、
のいずれについても「責任の程度の違いこそあるものの、法的責任を問うことができる」と指摘。
類似事案の発生を抑止するため、いずれについても法的責任を追及し、「先例となる裁判例を取得したい」としている。刑事告訴については検討中だという。
小沢弁護士は「リツイートだけしている人は、相対的には法的責任は軽い方だが、被害を拡大させた一番の要因は、リツイートした人がたくさんいることだと思っている」と指摘した。
●デマ拡散の経過
8月16日 茨城県警により、男性被疑者が全国に指名手配される
17日午前4時ごろ ツイッターに、車に同乗していた女性はAさんであると名指しし、AさんのInstagramのアカウントをスクショした投稿がされる
午前5時ごろ 「5ちゃんねる」にAさんのインスタグラムのリンクを貼った記事が投稿される
午前7時44分 Aさんが自身のFacebookに「完全に事実と異なりますので無視してください」と投稿 女性が17日朝に自身のFacebookにした投稿
午前10時ごろ Aさんが小沢弁護士に電話相談
昼ごろ Aさんが警察署に相談。加害者が分からないことから断られる
昼ごろ〜夕方 ネットで「Aさんが同乗女性という情報はデマ」という意見が増えていく
18日0時半 Aさんが経営する会社のHPで声明文を公開
18日午前 男性被疑者の逮捕報道
18日夜 女性被疑者の逮捕報道