1996年に浜松市で起きた強盗致死事件。17年後に、海外にいた容疑者をようやく逮捕できたと思ったら、保管していたはずの証拠品が全て無くなっていた。静岡県警でそんな不祥事が起きた。
報道によると、事件後に行方不明になっていた長男が昨年8月、マレーシアで逮捕された。容疑者はその後起訴されたが、裁判の過程で証拠品の紛失が発覚した。警察が無くした証拠品は、父親が着ていた服や銀行の防犯カメラのテープなど、合わせて13点。県警は「起訴されたので捜査への影響はなかったと考えている」とコメントしている。この事件はまだ公判の最中だが・・・・。
また大阪でも4月、府警が必要な捜査を行わず、捜査書類や証拠品を廃棄したとして、証拠隠滅などの容疑で、男性警部補が書類送検されたと報道があった。警察のずさんな証拠管理がここでも浮き彫りになっている。
一般社会では、他人のものを誤って廃棄したり紛失したりすれば、それ相応の責任を負うものだが、証拠品を紛失した警察が法的に責任を問われることはないのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。
●紛失したら、責任を取らなければならないのは、一般社会と同じ
村上弁護士は「基本的に、証拠品といっても他人の所有物を預かっているわけです。捜査に必要がなくなれば、返さなければなりません。紛失した場合も、弁償する必要があります。ただ、証拠品については、もとの持ち主が所有権を『放棄』している場合もよくあります。この場合は、警察が証拠品を廃棄しても、紛失しても、元の持ち主が『弁償してくれ』とは言えません」という。
では、所有権が放棄されていれば、責任は問われないのだろうか?
「そうは言えません。たとえ所有権は放棄されていても、証拠品は刑事事件の真実発見や犯人処罰の実現に繋がる大切な資料ですから、いい加減に扱うことは許されていません。
具体的には、各都道府県警察の『証拠品管理要綱』などによって、管理方法が規定されています。これに反してずさんな扱いをして、大切な証拠品を廃棄するなどして捜査に悪影響を及ぼした場合、警察官に対して懲戒処分等がなされることがあります」
●証拠品の紛失が起きる理由
なぜ、紛失が起きるのか?
「実は、証拠品管理にずさんな面が出ていたのは、担当している警察官個人の責任だけとは言えません。これまで各警察署のスペースが手狭で、事件によっては証拠品も膨大になるなど、管理が十分にできにくい状況もあったのではないかと思われます」
今後、そのような状況は、改善されていくのだろうか。
村上弁護士は「取り組みは今まさに進められているところです。例えば、大阪府警は2012年4月、『証拠品管理センター』という専用スペースを設け、一括管理を始めました。今後はコンピューターやバーコードを効果的に利用するなど、証拠品管理体制の一層の改善と効率化が望まれます」と話していた。
倉庫で一括管理するとなれば、おそらくこれまでとは違う管理手法が必要だ。警察はノウハウをきちんと積み上げ、できるだけミスを低減するように努めてほしい。