美容医療クリニックで効果のない施術を受けて高額請求されたとして、被害にあった60代と80代の女性2名が11月29日、美容医療クリニックの開設者である医師に対して慰謝料など計約1090万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。
高齢者を狙った美容医療消費者被害は東京都内を中心に相次いでおり、「国民生活センター」も注意喚起を行っている。提訴後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した医療問題弁護団の晴柀(はれまき)雄太弁護士は、「今来ている相談は氷山の一角」と相談を呼びかけている。
●数百万円払うも、治療効果なし
訴状などによると、2人の女性はいずれも「切らずにまぶたのたるみ改善!」「ここがスゴい!リフトアップ注射」などとうたった新聞折り込み広告を見て、美容医療クリニックを受診。
60代女性は、「船橋美容皮膚科」で上まぶたのたるみを治す手術を受け、約129万円を支払った。しかし手術後に二重の線が不自然な状態になっており、別の診療所で「(船橋美容皮膚科で受けた手術は)治療効果がない」と説明を受けた。また、80代女性は、「茅ヶ崎美容形成クリニック」でリフトアップ注射2回分の施術費用として約259万円を支払ったが、1回目の注射後もなんら効果を感じず、半年後に行うと言われた2回目の診察を希望しようと電話したところ、クリニックの電話は繋がらなくなっていた。
会見に同席した80代女性は、「半年後と言われたのは騙すつもりで、計画的な準備期間だったように思う」と振り返り、「鏡に映る自分をみて『騙しやすい顔をしているのか』と毎日泣きましたが、今はただただ詐欺にあった料金を取り戻したいと毎日思っています」と訴えた。
●同様の手口、組織的な犯行か
晴柀弁護士によると、現在までに弁護団だけで10医療機関計12人の被害者からの相談を受けているという。
いずれの医療機関も医師個人を開設者として届出がなされているものの、クリニック名に駅名が入っている、代金の送金口座の名義人が同じ、中高齢者をターゲットとして新聞折り込み広告が利用されている、患者側代理人の介入後に多くの診療所が廃止ーーなどの共通点があり、晴柀弁護士は「チラシの作り方もモデルが同じなどほぼ同様なので、組織の関与が疑われる」と指摘した。
「自分が悪かったんじゃないか、騙される落ち度があったのではないかという方が多い」と晴柀弁護士。弁護団は同様の被害について、相談窓口で対応する。電話番号は03-6909-7680。