1歳の実の娘にわいせつな行為をし、その様子を撮影した動画を販売したとして、強制わいせつの罪に問われた米国人男性の初公判が9月15日、大阪地裁で開かれた。検察側が懲役2年を求刑し、即日結審した。
被告人は起訴内容を認めたものの、犯行の動機については、経済的に困窮していたためだと説明し、娘に対する性的意図を否定した。
しかし、法廷では、別の娘に対しても盗撮を繰り返していたことが明らかになった。こちらについては、自身の性的欲求を満たすためだったと認めた。
「本当にダメな父で申し訳ない」
そう謝罪する一方で、被告人は「壊れた家族を元に戻したい」ともうったえた。
実の娘を被害者とする事件について、父親は何を語ったのか。法廷でのやり取りを振り返る。(裁判ライター・普通)
●1歳の娘へのわいせつ行為を撮影、1000ドルで販売
起訴状によると、事件が起きたのは2018年。被告人は、当時1歳だった実の娘(Aさん)の陰部を指で触るなどのわいせつな行為をしたとされる。
被告人は起訴内容を認めた。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は米国生まれで、約20年前に海兵隊員として横須賀基地に勤務していた。その後、日本人女性と結婚し、6人の子どもをもうけたが、今回の事件を機に離婚している。
事件当時、被告人は無職だった。
インターネット上で知り合った人物から、わいせつな画像の販売を持ちかけられ、当初は妻との性交の様子を撮影したファイルを送っていたという。
しかし、その後、相手から児童ポルノを要求されるようになった。
被告人は、Aさんが寝ている間にわいせつな行為に及び、その様子をスマートフォンで撮影。動画を1000ドルで販売したとされる。
事件が発覚したきっかけは、米連邦捜査局(FBI)による児童ポルノの製造元に関する捜査だった。
被告人のパソコンからは、Aさん以外の娘の画像データなども発見されたという。
●「性的欲求を満たすためではない」
被告人質問では、弁護人が犯行に至った経緯などを尋ねた。
日本での生活が長いためか、被告人はところどころ日本語で受け答えをしていたが、質問や回答の多くは英語の通訳を介しておこなわれた。
被告人によると、事件当時は数カ月間仕事をしておらず、妻の月収約20万円で家族8人が生活していた。経済的に非常に苦しい状況だったという。
弁護人から、犯行は自身の性的欲求を満たすためだったのかと問われると、被告人は「チガイマス、ノー」と日本語で否定した。
そのうえで「依頼は断るべきだった」「本当にダメな父で申し訳ない」と謝罪した。
●別の娘への盗撮は認める
しかし、法廷では、被告人がAさん以外の娘(Bさん)に対しても、脱衣所で盗撮を繰り返していたことが明らかになった。
こちらについては、自身の性的欲求を満たす目的があったと認めた。
被告人によると、Bさんには2度にわたってカメラを発見されたという。
その際、Bさんから「こんなことを続けられるなら自殺する」と言われた。被告人は、娘の失望した目を見て盗撮をやめたと説明した。
一方、被告人は裁判が終わったあとも日本に残ることを希望している。
子どもたちに自分から会いに行くことはないとしながらも、子どもたちが望むのであれば会いたいと述べた。
元妻は、養育費を支払ってほしいという思いから、被告人に対する寛大な処分を求める嘆願書を提出している。ただ、それ以外に被告人に対してどのような思いを抱いているのかは、法廷では明らかにならなかった。
●「逮捕されて大変なことになる」動画販売の悪影響を問われ
被告人は、Aさんへのわいせつ行為について、性的な目的はなく、経済的に困窮していたために犯行に及んだと説明した。
これに対し、検察官は、当時働くことができなかった理由を問いただした。
被告人は「日本語は話せるが、読み書きができない」「運転免許もなく、仕事は限定的だった」などと答えた。
事件から約8年が経過した公判当日も、被告人は日本語の書面を読むことができない様子だった。
離婚した今、養育費を支払うために働くのであれば、日本語を学ぶ必要があるのではないか。
検察官からそう問われると、被告人は「もちろん」と答えたものの、今後の具体的な見通しは語らなかった。
続いて検察官は、動画を販売する行為がもたらす悪影響について尋ねた。
被告人は「逮捕されて大変なことになる」と答えた。
●売った相手の本名は把握していなかった
しかし、動画の販売によって生じる問題は、被告人自身が逮捕されることだけではない。被害者の性的な画像や動画がインターネット上に流出し、拡散されるおそれもある。
検察官は、その点についても追及した。
検察官:動画がネットで世界中にさらされるとは思わなかったんですか?
被告人:もちろんその可能性はありますが、その人(売った相手)はそれはないなと。
検察官:相手を知っていたんですか?
被告人:何カ月も前から知っています。
検察官:直接会ったことは?
被告人:ないです。チャットでやり取りしていました。
検察官:その人の本名とかはわかってたんですか?
被告人:そこに考えは及んでいませんが、それが問題とは思わなかったです。
被告人は、動画を購入した相手と直接会ったこともなく、本名も把握していなかった。それでも、動画が第三者に拡散される可能性について、当時は問題だと思わなかったという。
娘の性的な動画がインターネット上に流出する危険性を、被告人はどこまで理解していたのだろうか。
法廷での受け答えからは、その点について十分に向き合っているのか、疑問が残った。
●「壊れた家族を元に戻したい」最後に語った願い
裁判の最後、被告人は最終陳述で、次のように述べた。
「過去に酷いことをしたことは認めます。でも、もう止めたし、後悔しています。二度としません。私はただ家族といたいだけなんです。壊れた家族を元に戻したいです」
被告人は犯行を認め、後悔していると述べた。そして、家族と再び一緒に暮らしたいという願いを口にした。
しかし、被告人が望む家族の再建と、被害を受けた子どもたちが望む将来は、必ずしも同じではないだろう。
子どもたちは父親の行為をどう受け止め、今後どのような関係を望んでいるのか。その思いは、今回の法廷では明らかにならなかった。
被告人が「壊れた家族を元に戻したい」と願うのであれば、まず向き合うべきは、自らの行為が子どもたちに与えた被害ではないだろうか。
そんな疑問を持たずにはいられない裁判だった。