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「俺も一緒に死ぬつもりだった」娘2人をマンション6階から投げ落とした父親…見過ごされる「危険のサイン」
岐阜県警本部(Googleストリートビューより)

「俺も一緒に死ぬつもりだった」娘2人をマンション6階から投げ落とした父親…見過ごされる「危険のサイン」

幼い子ども2人が、父親によってマンション6階のベランダから投げ落とされるという事件が起きた。

報道によると、岐阜県各務原市で9月26日、4歳と1歳の娘2人を自宅マンションのベランダから投げ落としたとして、25歳の父親が殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。2人は消防が設置していたマットなどの上に落下し、命に別条はないとみられている。

事件のおよそ5時間前には、妻から「けんかをして夫に腕をつかまれた」と110番通報があり、警察が現場に駆けつけていたという。

父親は当時、周囲に「俺も一緒に死ぬつもりだった」などと話していたといい、警察は夫婦間にトラブルがあったとみて、詳しい経緯を調べている。

夫婦間のトラブルと、子どもへの危害にはどのような関係があるのか。重大な事件に発展する危険を察知することはできないのか。

また、家庭内のトラブルに警察などが介入した際、幼い子どもがいる場合には、どのような対応が求められるのか。

児童虐待事件にくわしい飛田桂弁護士に聞いた。

●夫婦間のトラブルが「子どもへの被害」につながることも

──一般論として、夫婦間のトラブルが、子どもへの暴力や生命への危険にまで発展することはあるのでしょうか。

親しい間柄における暴力や心理的な攻撃には、さまざまなパターンがありますが、共通するものとして、「相手を従わせる力や支配」が核心にあると言われています。

そして、「支配」によるDVの代表的な手段の一つが、「子どもを利用した支配」です。

「別れたら子どもと二度と会わせない」「子どもがどうなってもいいのか!」と脅すのが典型例です。夫婦間のDVも、視点を変えれば、子どもへの被害につながる問題なのです。

●重大事件の前にある「サイン」が見過ごされる

──子どもを利用して配偶者を苦しめたり、支配したりするケースや、いわゆる「無理心中」のように子どもを巻き込むケースでは、重大な事件に至る前に何らかの兆候がみられるのでしょうか。危険を察知するためには、何が重要なのでしょうか。

「無理心中」などに至るまでには、「力と支配」を具現化するトラブルが数多く起きると言われています。具体的には、夫婦間のトラブルや虐待行為などです。

しかし、専門機関が「深刻ではない」と誤って評価したり、情報が分散したりしていると、適切な評価ができず、危険のサインが見過ごされてしまいます。

重大化するケースでは必ず物理的な暴力を伴うという思い込みがあると、無理心中のような「支配」が優位な事案を防ぐことはできません。

また、情報が警察(通報等)、市役所(DV相談等)、児童相談所(虐待通告)などに分散してしまうと、事態の深刻化を察知することが難しくなります。

●子どもへの直接的な加害がなくても「安全確保」を

──今回の事件では、妻からの110番通報を受けて警察が現場に駆けつけていました。夫婦間のトラブルがあり、幼い子どももいる家庭に警察などが介入する場合、子どもの安全については、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。

詳細がわからないので推測になりますが、今回の事件では、親権者である父親が自宅内にいる状況で、母親への加害を理由として、子どもにも危険があると判断し、介入することが難しかった可能性があります。

しかし、実際には、先ほど申し上げたように、パートナーへの暴力がある場合、子どもへの暴力についても強く疑うべき状況といえます。

切迫度に応じて、裁判所や検察官、あるいは警察や児童相談所などが関与し、子どもへの直接的な加害が確認されていない場合でも、子どもの安全を確保できる方法が具体的に用意される必要があります。

まずは子どもの安全を確保し、中立的に事実を確認したうえで、子どもが戻る場所を検討することが望ましいと考えます。

●危険は逮捕や事件の終結後も続く

──家庭内で暴力があり、加害者が逮捕されたとしても、その後に釈放されたり、刑事裁判を経て将来出所したりする可能性があります。DVや児童虐待のケースで、被害者や子どもの安全を長期的に確保するうえでは、どのような課題がありますか。

現在も、出所に関する通知制度などはありますが、被害者の多くは、怯えた生活を強いられます。

加害者がSNSで被害者を探したり、友人に接触したりして、怖い思いをすることがあっても、釈放や出所後の接触・立入禁止、探索禁止や、条件に違反した場合の罰則などの仕組みがないためです。

また、日本では、親権について公的機関が介入する仕組みも欠けているため、DVの被害者自身が、加害者と子どもの親権や監護方法について争うことを強いられます。

DVや児童虐待などの場合に特化して、被害者を守り、新たな被害を防ぐための仕組みを整え、「被害者や子どもを守る社会」のあり方を検討していく必要があります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

飛田 桂
飛田 桂(ひだ けい)弁護士 飛田桂法律事務所
認定NPO法人子ども支援センターつなっぐ代表理事であり、司法面接者でもある。神奈川県弁護士会に所属し、児童相談所の非常勤弁護士、いじめ第三者委員会を歴任するなど、子どもに関する法律関係を専門とする。

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