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袋が破れた商品を届けた小学生を「万引き犯」扱いーーコンビニに慰謝料を請求できる?
子どもの善意は大切に扱いたい

袋が破れた商品を届けた小学生を「万引き犯」扱いーーコンビニに慰謝料を請求できる?

コンビニで売られている遊技用カードの袋が破れているのを見つけて、店に届けた小学生6人が経営者から犯人扱いされていた――。そんなニュースが話題になった。

毎日新聞によると、児童6人は2月7日、大分県日田市のコンビニ店で買い物をした際、袋の破れた商品が床に落ち、カードが一部、抜き取られているのを見つけた。店員に届け出たところ、翌日、コンビニの経営者から保護者とともに呼び出されたという。

経営者は「破って中のカードを盗んだだろう」と一方的に問いただしたうえ、警察に通報。6人はもともと万引きを否定していたのに、警察からそれぞれ事情を聴かれる事態に発展したという。その後、防犯ビデオの映像から、別の人物が袋を破っていたことが判明し、経営者や店長らが謝罪した。しかし、泣きじゃくる児童もいて、ショックを受けた様子だ。

ネットでは「かわいそうすぎて泣けてくる」と児童を心配する声や、店の対応のまずさを指摘する声も多い。今回のように、無関係なのに万引き犯扱いされた場合、精神的に傷つけられたとして、店を訴えることはできるのだろうか。東山俊弁護士に聞いた。

●「慰謝料」が認められてもおかしくないケース

「まず、無実の人を犯人扱いすることが犯罪になるか考えましょう。刑法には、『虚偽告訴罪』という罪があり、犯人でないことを知って告訴をしたり、被害届を提出したりした場合に処罰されます。

しかし、犯人でないと知っていなければ、この罪は成立しません。今回のような場合、たいていは、犯人であると勘違いして被害届を提出するのだと考えられますので、虚偽告訴罪は成立しないでしょう」

けれど、児童の心の傷は深そうだ。損害賠償を請求することはできるだろうか。

「たしかに犯人扱いされることは、精神的に大きな苦痛です。犯人扱いをしたことについて、慰謝料を請求することはできるでしょう。

ただ、慰謝料を請求するためには、相手方の『故意』『過失』が必要です。今回のような場合では、『故意』は、店側がもともと児童が無実だと知っているような場合を意味します。

また、『過失』は、監視カメラの映像を確認する等すれば無実であることを確認できたのに、そういった対応をとらず、一方的に犯人扱いしたような場合を意味します。

店側の『故意』や『過失』が認められない場合は、慰謝料を請求できません」

今回のケースで、店側は警察へ通報した後に、監視カメラの画像を確認して、犯人が別にいることに気づいたようだ。これは、店の「過失」と判断してもいいのだろうか。

「今回は、慰謝料が認められてもおかしくない事案です。店としては、本人たちが否定している以上、まず、本人たちの話をじっくり聞いたり、監視カメラの映像を確認したりといった対応が必要だったでしょうね。安易な犯人扱いは、問題を引き起こしかねません」


東山弁護士はこのように話していた。子どもの善意は、大切に扱いたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

東山 俊
東山 俊(ひがしやま しゅん)弁護士 東山法律事務所
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。

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