家本 誠 弁護士
調停について 兄の方は、調停では、引き出した金額は父の生活費として使用をしたものであり、自分の為に使ったものではないなどという反論が出されました。 しかしそもそも引き出された金額は、従前、被相続人である父が生活費として使用していた金額を大きく上回るものであり、そのような特別な支出が必要となった事情についても兄の側で明らかにすることができませんでした。 これに対して兄からは、預金の引き出しは、父が行ったか、又は父の指示で行ったものであり、引き出した金額は、全て父に渡しているので、自分の為に使用をしたものではなく、父が何に使用をしたのか、その点は分からないなどという反論が兄から出されました。 上述したような言い訳は、お金を引き出して自分の為に勝手に使用した親族が、苦し紛れに主張するものです。預金からの引き出し当時、被相続人である父が、自分一人で外に出掛けたりすることはできず、また多額のお金を使用するような理由も特段ないこと、更には預金が引き出されていることを知りながら、それを一切管理しようとしない兄の言い分が極めて不自然であることなどから、兄の言い分は、全く説得的でもなく、合理的でもありませんでした。 そのため兄がこれ以上、言い訳の主張を繰り返すのであれば、裁判をすることも辞さないことを強く申し入れをしました。 実は、家庭裁判所での遺産分割は、現在残った遺産のみを対象とするものになります。そのため今回の御依頼者が問題としたいと考えたような、引き出された金銭(この金銭は預金通帳には残っていないため、被相続人の名義で実際に残った財産とは言えません)については、本来家庭裁判所の遺産分割手続きの中で調停や審判で遺産分割をする対象とすることはできません。もちろん当事者双方が、引出された金銭について、家庭裁判所での遺産分割手続きの対象とすることを合意をした場合は別です。そのため、兄が引き出した金銭について、自分の関与を認めないような場合は、その点に関する争いは、家庭裁判所ではなく、地方裁判所で判断をしてもらうこととなります。 御依頼者にとっても、地方裁判所で別に裁判を起こすことは、費用的な面、時間的な面を含めて大きな負担になることがあります。そのようなこともあって、兄に対しては、引き出した金額全額ではなく、約6割程度の金額を遺産分割協議の中で考慮してもらうことを、こちらとしては提案し、相手方である兄にもこの内容で了解をしてもらいました。 その結果、前述したような別の裁判を地方裁判所でするという負担を回避することができました。結 果 御依頼者は、現在残っている遺産について、兄よりも400万円程度多い金額で遺産を分割することができました。 兄が引き出した金額を全て遺産分割の調停で問題とすることはできませんでしたが、約6割程度の金額を相続財産として戻すことで双方が合意できたことは、手続きを迅速に進めたことと併せて考えれば、良い結果であったと思います。
他の相続人が親の預金通帳から勝手に引き出したお金の返還を求めたケースの
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