「伝え続けて、未来を変えたい」消費者被害に注力し、被害回復だけでなく予防にも尽力
「法律の知識を身につけて人の役に立ちたい」
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
私は高校を卒業後、大学では法学部法律学科に進学しました。 「人気のある大学・学部だから」という単純な理由からです。
入学してみると、法曹を目指して勉強する同級生が多く、自分も徐々に影響を受け始めるようになりました。法律や社会の成り立ちは非常に奥が深く、勉強すればするほど「法律の知識を身につけて人の役に立ちたい」という気持ちが湧いてきたんです。
猛勉強を重ねて、旧司法試験に合格。2006年10月に弁護士登録しました。
大学進学時は、まさか自分が弁護士になるとは考えもしませんでしたが、今は弁護士しか考えられないというくらいに仕事にのめり込んでいます。
ーーどんな学生生活でしたか?
大学では「AIESEC(アイセック)」という国際交流サークルに参加していました。英語を話せるようになりたいと思っていたのと、いろいろな国の人と友人になりたいと思って参加しました。
1年生のときに国立台湾大学の学生を日本に招いて、約2週間一緒に過ごしたことが思い出に残っています。大学のキャンパスだけでなく、海やキャンプ場、当時日本で流行していた人気スポットなどに行きました。
2年生の後半から司法試験の予備校に通い始めたため、サークルで活動した期間は短かったですが、貴重な体験ができました。
「世の中にはおいしい話はない」と伝えたい
ーー注力している分野と、注力している理由についてお聞かせください。
消費者被害に取り組んでいます。日弁連の消費者問題対策委員会での活動のほか、神奈川県弁護士会の消費者問題対策委員会では副委員長を務めています。また、川崎市の消費者行政センターのワンポイントアドバイザーとして、相談員へのアドバイスなども行っています。
近年、高齢者や判断能力が不十分な人をターゲットにした悪徳な業者が増えていて、被害金額も高額になっています。こうした被害を未然に防ぐための情報発信をブログや講演を通じて行ったり、被害に遭われた方の被害回復に尽力しています。
最近はインターネットによる事件が増加しています。SNSで知り合った人から投資話を持ちかけられてお金をだまし取られるというケースが増えているのですが、中でも暗号資産(仮想通貨)を使ったトラブルが問題になっています。インターネットは相手の特定がしづらい上に、暗号資産は取引の追跡が困難なため、だまし取られた資産の回収が難しいのです。
消費者被害に遭われた方の中には、十分な回収が難しいと聞いて泣き寝入りする方もいます。加害者の特定と被害回復の難しさはありますが、それだけに事件を未然に防げたり十分な回収ができたときの喜びは大きいです。
ーー消費者被害に遭わないために気をつけることはありますか?
「世の中にはおいしい話はない」ということをお伝えしたいです。
「タダでお金がもらえる」「楽して儲けられる」といった話があっても一人で決めるのではなく、必ず誰かに相談してください。できれば相談相手の中に消費者センターを入れてほしいです。
残念ながら消費者センターの認知度はあまり高くなく、その機能が活かしきれていないと思います。消費者センターはいろいろな相談を受けてくれて、業者との交渉なども行ってくれます。クーリングオフ通知の書き方なども教えてくれるので、事案によっては消費者センターで解決する場合もあります。
消費者センターがもっと活用されれば事件を未然に防ぐこともでき、消費者被害に遭う方を減らせると思います。そのために私も、消費者センターの認知度を上げるための活動をしていきたいと考えています。
ーー仕事をする上で心がけていることを教えてください。
レスポンスを早くすることを念頭に置き、「挨拶」「電話応対」「迅速対応」の三つを意識しています。
気持ちのいい挨拶は、心を切り替えられるきっかけになります。調停や訴訟の相手は喧嘩相手ではなく、お互いが納得できる解決を目指すための交渉相手です。相手に不快な印象を与えるよりも、気持ちのいい挨拶をすることで前向きな交渉をしたいと考えています。
電話応対は、弁護士の仕事をする中で強く意識するようになりました。 初めて法律事務所へ電話をかけてくださる方にとって、電話応対というのは非常に大きな判断要素になります。悪い印象を与えてしまっては、相談前に心が遠ざかってしまうかもしれません。「この弁護士になら相談したい」と思っていただけるような電話応対に努めています。
迅速対応というのは、メールの返信から書面作成に至るまで、常に早めの対応を行うことです。 依頼者の負担や不安をなるべく早く解消するためにも、弁護士に仕事が溜まるということがないよう迅速な対応を心がけています。

ーーこれまで担当した中で印象に残る事件があれば教えてください。
むかし、国選付添人を引き受けたある少年事件が印象に残っています。
国選付添人制度とは、少年事件で、家庭裁判所の少年審判を受ける少年に国費で弁護士を付ける制度のことです。 少年は、オレオレ詐欺の一番末端で犯罪に手を貸したとして逮捕されました。
オレオレ詐欺などの詐欺犯罪では、電話をかけて騙す“掛け子”と呼ばれる仕事や、直接現金を受け取る“受け子”と呼ばれる仕事が存在します。 そして残念ながら、未成年の少年少女が「いいアルバイトがある」と話を持ちかけられ、お小遣い欲しさに犯罪に加担してしまうケースが後を絶たないのです。
この事件でも“受け子”の仕事をした少年が、警察・検察での取り調べを受け、詐欺に加担していることを認める調書が既に出来上がっていました。
しかし、接見を重ねると、少年が「現金を受け取ったのは事実だが、犯罪だとは知らなかった」と言うんです。
取り調べの際、警察官や検察官に「共犯者も君が詐欺と認識していることを認めているよ」などと問い詰められた少年は、「何を言っても無駄だ。信じてもらえない」と諦めてしまい、正しくない供述調書に対しても「間違いない」と頷いてしまっていたのでした。
「間違っていることは間違っていると主張しよう」と、私は少年を説得しました。 そして最終的には、審判で一部不処分(成人の場合の「一部無罪」)を獲得することができました。
私が付添人を担当したからといって、少年の人生が180度変わるとは思っていません。 でも、少年犯罪では、たった一回の過ちで進学や通学が叶わなくなることも少なくありません。
私と出会うことによって、自分の人生の大切さをもう一度真剣に考えて欲しい。そんな思いで必死に臨んだ少年審判でしたね。
「経験を積んだ弁護士でないと、気づけないことがある」
ーー趣味や休日の過ごし方について教えてください。
趣味はマラソンです。平日は朝早く起きて、出勤前に5~6㎞走っています。休日は15kmくらい走っています。司法試験の勉強をしていた頃に運動不足を解消しようと始めたのがきっかけで、最初は短い距離だったのが少しずつ伸びていき、フルマラソンも走れるようになりました。コロナ前は全国各地のマラソン大会に出ていたので、コロナが収束したらまた参加したいと思っています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
これまでと変わることなく、一つ一つの事件に丁寧に向き合って処理をしていきたいと思います。消費者被害については、暗号資産が絡む問題に対応していけるように、知識を身につけていきたいです。また、消費者センターの周知活動をはじめ、被害を未然に防ぐ活動も務めていきたいと考えています。
ーー法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
最近は情報化社会が進み、誰もが簡単に、書籍やインターネットを通して法律知識を得られるようになりました。
でも一方で、経験を積んだ弁護士でないと、なかなか気づくことのない着眼点があることも事実だと考えています。
例えば以前、離婚問題について、「とにかく親権だけは譲りたくない」と希望する方からの相談を受けたことがありました。しかし私は、お話を聞いて、親権の取得の問題よりもマンションを含む二人の共有財産をどう分けるかという問題の方がはるかに難しい交渉になるだろうと直感しました。
このように法的トラブルというものは、関係者の状況や歴史、感情などによっても結果が大きく変わるものなので、断片的な知識だけで解決できるケースは少ないです。
思わぬトラブルに巻き込まれてしまった方や、まだ顕在化していないけれど不安なことがあるという方は、お早めに弁護士に相談することを強くお奨めいたします。
