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「保育士の処遇改善なくして、待機児童の解消はあり得ない」保育園問題の専門家が指摘
シンポジウムの様子

「保育士の処遇改善なくして、待機児童の解消はあり得ない」保育園問題の専門家が指摘

保育園不足や待機児童などの問題を考えるシンポジウム「新制度で保育はどうなったか? 待機児童、保育の質、子育て支援」(主催:公的保育を守る練馬連絡会)が2月28日、東京都練馬区で開かれ、幼い子どもを持つ親など100人あまりが参加した。

シンポジウムでは、元帝京大学教授で、保育園問題に詳しい村山祐一さんが登壇。待機児童が生まれる背景には、給料の低さや労働環境の厳しさから保育士の離職が相次いだことによる保育士不足があるとして、待遇改善を求めた。

●全職種平均より「100万円低い」保育士の平均年収

村山さんによれば、保育士の平均年収は全国で214万円。全職種の平均325万円に比べると100万円以上の差がある(「平成24年賃金構造基本統計調査」)。

また、保育士は園児の世話をする以外にも、事務作業や会議、各種研修などにも追われる。これらが就業時間内にとれないため、残業が慢性化していることも、保育士が離職する要因となっていると指摘した

「社会全体が、ワークライフバランスが大切だと言ったり、完全週休2日制が基本になっているのに、保育士については全然考慮されていない。休みも取れず、給料も低く、どれもこれも全て低い水準になっている。保育士の処遇の改善なくして、待機児童の解消はあり得ない」

そこで、村山さんは「例えば、8時間の労働時間のうち、子どもを世話する時間を6時間にして、残りの2時間で会議や研修をおこなってはどうか。そのためには、今よりも職員を2割多く配置する必要がある」と処遇改善を訴えていた。

●4人に1人の現役保育士が「保育士を続けるつもりはない」

シンポジウムでは、過去に行われた保育士を対象にした調査結果の内容も紹介された。

東京都福祉保健局が2014年3月に公表した「東京都保育士実態調査報告書」(有効回答数:約1万5000件)によると、正規職員として働く約25%の保育士が、保育士の仕事を続けるつもりはないと回答した。「保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい」と答えた人は20.8%、3.2%は「保育士を辞め、働かないつもりだ」と答える。

また、在職年数が短いのも特徴的だ。「潜在保育士」(保育士資格を持っているが、保育士として働いていない)を対象にハローワークが2013年5月に実施した別の調査によると、潜在保育士のうち、半数以上が5年未満で保育士を辞めたという結果が出ているという。

前出の東京都保育士実態調査では、過去に保育士として働いていた人に対して、どのような条件であれば再び働きたいと思うかという質問をしている。

この質問に対して、希望勤務日数として最も多かったのは「週5日勤務」、希望年収の平均は「307.3万円」だった。村山さんは「これらの条件は異常に高い条件ではなく、今の社会では当たり前」と指摘した。

(弁護士ドットコムニュース)

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