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東京入管の外国人収容者「ハンスト」決行背景「在留資格のない外国人には人権がない」
「仮放免者の会」顧問弁護士の指宿昭一氏(左)と事務局長の宮廻満氏

東京入管の外国人収容者「ハンスト」決行背景「在留資格のない外国人には人権がない」

東京入国管理局の施設に収容された外国人が、施設内の待遇改善をもとめて、食事を一切とらない「ハンガーストライキ」を実施したことについて、非正規滞在者の支援活動をおこなっている団体が5月25日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。「仮放免者の会」事務局長の宮廻満氏は、被収容者たちの人権状況を改善するよう訴えた。

●ハンガーストライキのきっかけは?

宮廻氏によると、今回のストライキは、収容施設のあり方を考え直すようもとめる要望書を提出しようとしたところ、入管側が受け取りを拒否したことがきっかけ。5月9日の夕食から、東京入管の被収容者22人が食事をとらなくなり、最大70人が参加した。この動きに呼応して、名古屋入管でも5月15日、16日の2日間、約30人がハンガーストライキを決行。一時、全国約100人が参加した。

東京入管でのハンガーストライキは、12日から14日にかけて、3人(中国人、ナイジェリア人、バングラディッシュ人)が相次いで倒れたことから、参加者は水だけはとるようになり、22日の夕食まで続いた。最後まで参加していた一人は「体力の限界だけど、社会に知ってもらって、入管の対応が変化するか様子を見たい」と話したという。

●被収容者は、医者になかなか診てもらえない

そもそも、収容施設はどのような環境なのだろうか。宮廻氏によると、被収容者たちは、4〜11人部屋で生活している。部屋の広さは、定員数プラス1畳程度(たとえば、4人なら5畳)。被収容者の待遇は年々厳しいものになっているという。特に、体調悪化した場合にすぐに医者の診察を受けられない問題が深刻化している。

仮放免者の会の顧問弁護士をつとめる指宿昭一弁護士は「身体におかしいところあって診察を求めても、対応してもらえないことがよくある。急にひどい痛みが生じたり、発作が生じても、土日夜間は施設内に医者がいないので診てもらえない。外部の医者に診てもらえることもほとんどない」と述べた。

ある被収容者の場合、土曜日に痛みを訴えて電話をかけてきたため、指宿弁護士が救急車を呼んだところ、入管の入り口で追い返されたケースもあったという。結局、その被収容者が医者に診てもらえたのは月曜日だったそうだ。指宿弁護士は「こういうことが日常茶飯事に起きている」と怒りをにじませた。

ハンガーストライキに参加した一人は、指宿弁護士に対して「入管は、私たちのことを人間として扱っていない。これに抗議するためにハンストをするのだ」と話したという。

●「在留資格のない外国人には人権が保障されていない」

日本では、難民も移民も「入国管理法」のもと一元的に管理されている。たとえば、本国で迫害されて来日し難民申請しても、認められるまで、非正規滞在者として扱われる。法務省は近年、非正規滞在者(不法滞在、オーバーステイ、難民申請者)の取り締まりを強めている。

宮廻氏によると、入管施設に収容される人の中には、帰国すると迫害されるおそれがある人や、日本人と結婚した人、長期にわたって暮らして日本に生活基盤がある人も含まれており、いったん収容されるとなかなか出られなくなっているという。

指宿弁護士は「在留資格のない外国人には人権が保障されていない」「日本にも非正規滞在者を救済する制度はあるが、正しく運用されていない。日本人や永住者と結婚している場合など、合法的に滞在できるケースがある。すみやかにその制度を使うことが大事だ」と訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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