ワンセグ機能付き携帯電話の所有者に、NHK受信料の支払い義務があるかどうかが争われていた裁判で、水戸地裁(河田泰常裁判長)は5月25日、支払う義務があるとする判決を下した。昨年8月、さいたま地裁であった別の裁判では、ワンセグ携帯を所有しているだけでは、受信料を支払う義務はないとする判決が出ており、裁判所の判断が割れた形だ。
判決などによると、裁判を起こしたのは、茨城県高萩市に住む50歳の男性。男性はテレビを持っていなかったが、2016年7月、自宅を訪れた徴収員から、ワンセグ携帯の所持を理由に契約を結ばされた。男性は機種変更して、NHKとの契約を解除。NHKの対応に納得がいかないとして、支払った1カ月分の受信料1310円の返還を求めていた。
裁判の焦点は、昨年のさいたま地裁同様、「受信設備を設置した者」に支払い義務があると規定した放送法64条1項の解釈だ。男性は、携帯電話のワンセグは「設置」ではなく、「携帯」だと主張。しかし、裁判所は「設置」は「受信設備を使用できる状態におくことをいい、一般的にいう『携帯』の概念をも包括すると解するのが相当」と判断した。男性は控訴を検討しているという。
一方、さいたま地裁の判決では、「設置」に「携帯」の意味を含めることには無理があるとして、設置者ではないとした。NHKが控訴したため、東京高裁で争われており、一審で勝訴した埼玉県朝霞市の大橋昌信市議によると、まだ進行協議の段階。判決が出るのは、NHK受信料についての最高裁判断(年内の見込み)の後になりそうだ。大橋市議によると、NHKを相手にした「ワンセグ裁判」は、自身や今回の水戸地裁のものも含めて、少なくとも5件はあるという。