
名取 孝浩 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
根本的に「誰かを助ける職業に就きたい」という意識があり、弁護士を目指す前は教師や医師を目指していました。また、司法修習の際にお世話になった先生の、目の前の依頼者を全力で助けようとする姿に憧れ、自分も町医者的弁護士を目指すようになりました。
弁護士を始めとして、「先生」呼ばれる職業は人の不幸を糧に成り立っている職業です。教師は、子供たちが将来不幸に巻き込まれないように指導するという意味では不幸を予防する役割がありますし、医師は予防に加えて、病気や怪我、つまり不幸がそれ以上大きくなってしまわないようにするという役割があります。
そういった「先生」の職業の中でも、弁護士は自らの手で不幸を解決することのできる、数少ない職業のひとつなのではないでしょうか。
裁判には、依頼者の気持ちを法律用語に翻訳し、正しく代弁することのできる弁護士が不可欠です。カウンセラーのように、単にアドバイスをするだけであとは本人任せにしてしまうのではなく、解決に直接タッチできる、不幸の根本を見つめ、直すことができるというのは弁護士という職業の一番の魅力だと思っています。
扱ってきた事例
家事事件を始めとする一般民事から刑事事件まで、とにかく幅広い分野を扱ってきました。市民の方が悩んでいらっしゃること全般が取り扱い範囲と言っても過言ではありませんし、それこそが町医者的弁護士の特徴だと思います。
他の先生方と比較した際の特徴としては、医師を目指して理系の勉強をしていた時期があるので、数字やカルテを読む事にさほど抵抗が無いということが挙げられると思います。医学的な問題や、解決の課程で医師の意見を必要とする場面に至った場合に、ある程度の知識があるということは、多少強みになっていると思います。また、何故か交通事故の案件を担当することも多くあります。
交通事故の問題の難しさ
交通事故の問題の難しいところは、後遺症の認定です。後遺症の認定は、医師や保険会社が下すのではなく、医師の診断結果をもとに損害保険料率算出機構というところが認定するのですが、しばしば患者の訴えとずれた認定が下されてしまうことがあります。
市民の方々は、認定結果をあまり疑うことなく素直に受け入れてしまいがちです。だからこそ、カルテや診断書がある程度読める弁護士として、医師の専門家としての意見は尊重しつつも医師により正しく診断書等を書いてもらい、間違った認定があった場合には修正するよう訴えることが私の役割だと考えています。
弁護士としての信条・ポリシー
とにかく、人の不幸を生業としている職業だということは心に留めておきたいと思っています。
また、「争う金額の大きさ」と「依頼者の悩みの大きさ」は別物であることは意識しています。数千万円を争う事件でも大きな感情が伴わない場合もありますし、逆に、たった数万円を争う問題でもどうしても許せない方、心から悩んでいる方はいらっしゃいます。
金額がどうこう、という話ではなく、依頼者が大切にしているものを正しく見極めた上で、依頼者がその事件にケリをつけ、新たな気持ちで人生を歩んでいくにあたっていい転機になるような解決を提供することが大切なのではないでしょうか。また、そういった依頼者の気持ちを汲み取るためには、やはり依頼者の顔を見て、よく話を聞く事が不可欠だとも感じています。
やりがいを感じるとき
相談に来られたときと事件が解決したときで、依頼者の表情が全く違うことです。始めてお会いしたときは生気がないと言いますか、本当に辛そうな顔をしていらした方が、解決後は新しい人生のスタートを切ろうと前向きになられた様子を見るとやはり嬉しいですし、そのような人生の転機を作るお手伝いができたことに、弁護士として大きなやりがいを感じます。
どんなに辛いことがあっても、解決後の喜びややりがいがあるからこそ続けられる、というのが町医者的弁護士の醍醐味だと思いますし、逆に言えば、こういったことに喜びややりがいを感じる事ができない方は、町井医者的弁護士には向いていないのかもしれませんね。