依頼者に寄り添いつつ、冷静な視点から最善の解決方法を模索する
学生時代は野球に没頭
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
もともとは弁護士ではなく、検察官になりたいと思っていました。高校の現代社会の授業で政治腐敗について学んだときに、東京地検特捜部がいかに活躍したかを知って、かっこいいなと思ったことが法曹界に興味を持ったきっかけです。
法曹への憧れを抱いて法学部に進学し、ロースクールに入って司法試験を受け、司法修習期間中も検察官志望でした。ただ、修習中に、検察官として就職することがなかなか難しいと感じたことと、弁護士修習で指導担当をしてくれた先生がすごく尊敬できる方だったことから、「弁護士もいいな」と思うようになりました。
弁護士になりたいと思ったタイミングは、他の人よりだいぶ遅いかもしれないですね。今年で9年目になりますが、日々やりがいを感じながら仕事をしています。
ーーどんな大学生活を送っていましたか。
野球に明け暮れた4年間でした。
小学生の頃からずっと野球を続けていて、東大の野球部に入るのが1つの夢だったんです。その夢が叶って、学部生のときは野球ばっかりやっていました。ポジションは外野で、レフトなどを守っていました。
5勤1休、つまり5日練習したら1日休むくらいのペースで練習していて、たまの休みはひたすら寝ていたので、必ずしも法学部生として望ましくはなかったかもしれません。でも、それはそれで充実した学生生活でした。東大の野球部というと負けっぱなしのイメージがあるかもしれませんが、在学4年間でチームは8勝したんですよ。歴代でも悪くない方だと思います。
今も神奈川県弁護士会の草野球チームに所属しています。東京や大阪など各地の弁護士会にもチームがあって全国大会も開催されます。去年はコロナ禍で中止になってしまいましたが、例年はどのチームも、大会に向けてかなり真剣に練習しているんです。
ーーロースクール時代はいかがでしたか。
ロースクールに入って、ようやく法律を真面目に勉強し始めました。在学中は課題をこなすことで精一杯でした。
周りについていくのにただただ必死な毎日で、正直、1日何時間くらい勉強していたかもよく覚えていないですね。
ゆっくりと時間をかけてヒアリング
ーー弁護士になられてからの注力分野を教えてください。
いわゆる「町弁」として幅広い事件を扱っているので、特に注力している分野はないですが、最近は家事事件を扱うことが増えてきました。離婚や相続、後見などの案件です。
特に多いのは後見の案件です。区役所や地域包括支援センターなどから相談を受け、認知能力に不安のある高齢者の方に、後見人や保佐人をつける手続をおこなっています。
私自身が、裁判所から後見人や保佐人として任命される場合もあります。一生のおつきあいになるので大変な部分もありますが、縁があった方と深い関係を築けることは、後見事件を手掛ける上でのやりがいです。
ーー仕事で心がけていることを教えてください。
まず、相談者や依頼者の話をちゃんと聞くことです。特に、困っていることをうまく整理できないまま相談に来る方が多いので、じっくり時間をかけて話を整理することを心がけています。
依頼者の気持ちに寄り添うことも大事ですが、同一化しすぎないように気をつけています。時々、依頼者と一緒になって怒りを爆発させている弁護士を見かけますが、それでは、代理人を務める意味がないと思います。
依頼者は、トラブルを法律的に解決し、自分の利益のために少しでも有利な結果を得たいと思って、弁護士に依頼しています。その目的を叶えるために、弁護士は常に客観的な視点を持つ必要があります。依頼者と同化して感情的になり、冷静さを失ってはいけないと思います。
よい仕事をする上では、心身のコンディショニングも重要なので、休日はしっかり休むようにしています。仕事は無限に湧いてきて、休みの日でもつい抱えている案件のことを考えてしまいますが、無理をして後でリカバリーできなくなる方が大変なので。
ーー弁護士として活動してきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
スムーズに進んだ案件よりも、苦労した案件の方が印象に残っています。
弁護士になって2年目くらいのときに、交通事故で、若者を死なせてしまった方の刑事弁護を担当しました。
加害者本人は憔悴し、遺族の方はやりきれない気持ちを抱えていて、なんというか、みんな不幸だったんです。
仕事中に大型車を運転しているときに起こした事故だったので、会社としても本人をサポートすると言ってくれましたし、保険にも入っていました。亡くなった方は戻らないけれど、それ以外の部分で、可能な限り被害の回復をはかれる案件ではあったんです。
一方で、遺族のやりきれない怒りは大きく、保険でお金が入るからいいでしょうという方向には持っていけない…。悶々と悩みながら弁論に入ったことを覚えています。ただ、そのまとまりのなさが裁判官に届いたのか、こちらの主張をある程度評価していただいたことも印象深いです。
ある少年事件も記憶に残っています。悪い仲間とつるんで、いわゆる「親父狩り」を繰り返していた少年の弁護を担当しました。実際に面会をしてみると、思ったより素直で、そんなに悪い子ではなかったんです。出会った人が違ったら、きっと全く違う人生を送っていたのだろうなと思いました。
彼と面会を重ねる中で、「もう少し友人との付き合い方を考えていれば、こんなことにならずに済んだかもしれないよ」と伝えました。少年は精神的に未熟ですが、きっかけさえ掴めれば、どんどんよい方向に変わっていきます。付添人である弁護士の関わり方は大事だと感じます。
法律問題かわからなくてもOK「気軽に頼って」
ーー休日はどのように過ごしていますか。
土曜日は弁護士会の野球部の活動に充てて、体を動かしています。多摩川の河川敷で練習したり、横浜市内の草野球チームと試合をしたりしています。
野球の予定が入っていない日は、家族と過ごすことが多いですね。上の子が5歳で、特撮ものとか戦隊ヒーローものの番組を一緒に見ています。
ーー今後の展望を教えてください。
これまでと同様に、町弁として、しっかりと目の前の案件に臨むことを続けていきたいです。
裁判のIT化など変わっていくことも多いので、新しい流れに対応できるように、自分自身を日々アップデートしていくことも必要だと思います。
ーートラブルを抱えて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
「法律トラブルかどうかもわからないけど悩んでいる、辛い」という方は多いと思います。弁護士に頼むべきことなのか、といったことも含めて相談していただきたいです。もし、法律的な問題ではないと分かったとしても、そのせいで弁護士が怒ったりすることはありません。
弁護士に相談することに対して、ご自身でハードルを高く設定しすぎずに、気軽に頼っていただけたらありがたいなと思います。