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祭りを休むと「罰金1万円」、仕事やレジャー理由はダメ…そんなルールは法的に有効?
写真はイメージ(sasuke / PIXTA)

祭りを休むと「罰金1万円」、仕事やレジャー理由はダメ…そんなルールは法的に有効?

祭りを休むと罰金1万円ーー。兵庫県淡路市のある地区で、そんな驚きのルールがあることが神戸新聞で報じられ、話題となった。

神戸新聞によると、徴収を担うのは、地元の男性たちでつくる「青年会」。祭りの存続に危機感を抱いたため、約30年前から行われているそうだ。近親者が亡くなった場合などは免除されるが、仕事やレジャーなどの場合は認められないという。

この仕組みについて、「こういうノリは付いていけない」「裁判沙汰にしてやればいい」などの声がネットであがっている。このようなルールに法的な問題はないのか。寺林智栄弁護士に聞いた。

●ルール自体が無効になる可能性

「そもそも、町内会や地域の青年会は、加入を強制できる根拠がない、いわゆる『任意加入団体』です。その地域に住んでいるからといって、加入が義務付けられるわけではなく、加入するも退会するも本人の自由な意思に任されています。加入の意思表示をしていない人に対して、加入を無理強いしたり、加入しているという前提で、『会員としての義務』を課したりすることは許されません」

では、今回のルールをどう考えればいいのか。

「仮に、今回の『祭りに参加しなければ罰金1万円』というルールが、青年会に加入の意思を表示していない人に対して行われているのであれば、そもそも、罰金を支払うべき義務のない人にこれを科していることになります。青年会が徴収したお金は、何ら根拠のないものなので、本人に返還しなければなりません。

一方、罰金ルールの存在を知ったうえで、加入の意思を表示した青年会の会員に対して、罰金ルールを課すことは一見問題がないようにも思えます。

しかし、この点に関しては、法律家の間でも見解が分かれるのではないかと思います。私は、『信義誠実の原則』というものに反して、このルール自体が無効になり、罰金の徴収が許されないとされる余地があるのではないかと思います」

●所属、参加がメリットに感じられるような活動を

どのような点に問題があるのか。

「まず、1万円の支払いが免除されるのが、近親者が亡くなった場合などに限定されるというのは、住民の私生活上の都合をあまりにも考慮していない一方的なものといわざるを得ません。

また、そもそも罰金という制裁措置を科すべき性質のものかという点も問題です。仮に許されるとしても1万円は高額すぎるでしょう。

神輿の担ぎ手がいないという地域の問題を少しでも解消したいという苦肉の策ではあると思いますが、このような厳しい『制裁』を科すことは、『義務ばかりで所属するメリットがない』と住民に感じさせることとなり、かえって地域の活動から住民を遠ざける結果を招き、逆効果であると考えられます。

近年の地域の自治会と住民の間の加入をめぐる問題のほとんどは、このような『義務ばかりでメリットがない』と住民が感じていることや、個人の意思が無視されることに起因しているといえます。

青年会としては、『所属、参加することが自分たちにとってもメリットになる』と住民に感じさせる活動を重視することが、参加者を増やすためには、むしろ重要なのではないかと思います」

【情報募集!】弁護士ドットコムニュースでは「村八分」問題の取材を続けています。「自治体活動に反論したら、仲間はずれにされた」「挨拶しても返事をしてもらえない」「移住したら旧住民と軋轢があった」「脱退しようとしたら、嫌がらせにあった」などの体験がありましたら、以下からLINE友だち登録をして、ぜひご連絡ください。

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

寺林 智栄
寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。

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