
モットーは「戦わずに勝つ」 依頼者の利益を最大限確保しつつ、トラブルを早期解決
対面でのコミュニケーションを大切に
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
親の離婚を目の当たりにしたことで、法律が絡むトラブルや、その解決のために活動する弁護士という仕事に興味を持ちました。
ーー注力分野と、その分野に注力している理由を教えてください。
離婚分野です。弁護士になって初めて入所したのが離婚専門の事務所で、1年目で30〜40件の案件を担当しました。かなり多くの案件を手がけたことで、離婚案件について様々な知識を得て、自信もついたので、強みを発揮できる分野として注力していこうと思ったんです。今は弁護士6年目で、これまで手がけた離婚案件は100件近いと思います。
ーー離婚案件を手がける際に、心がけていることを教えてください。
ご相談内容を聞き、見通しを丁寧に説明することです。方向性をある程度理解していただいた上で依頼してもらうと、最終的によい解決につながりやすいためです。
また、打ち合わせはなるべく対面で話すようにしています。離婚案件では、依頼者がかなりナーバスになっていることが少なくありません。メールや電話だけでは、意思疎通がうまくいかず、依頼者が感情的になったり、逆にふさぎこんでしまうこともあります。顔と顔をつきあわせて話すことで、相手の表情や仕草など、言葉以外から伝わってくる気持ちを汲むことができます。対面で話して、依頼者に対する理解を深めた上で案件を進めていくことが大事だと思います。
――事務所のホームページに「戦わずに勝つ」という言葉がモットーとして書かれていました。
一般の方がイメージする優秀な弁護士というのは「裁判に勝つ弁護士」だと思います。ただ、私が手がける案件のほとんどは和解で終わります。依頼者の利益を最大限確保しつつ、トラブルを少しでも早く終わらせることが、私にとっての「戦わずに勝つ」ことであり、常に心に留めています。
早期解決のために、ときには、条件面で譲歩することを依頼者に提案することもあります。依頼を受けた段階である程度見通しを立てて、譲歩が必要な部分を説明し、覚悟しておいてくださいと話をします。
ただ、実際に和解を進めていくと、どうしても「譲歩するのは不本意だ」と不満が出てくる方もいます。そのような場合は、必ず直接お会いして、「譲れない部分があることはわかります。ただ、少しだけ譲歩して、早くトラブルを終わらせる方が、経済的にも、時間的にも、精神的にもメリットがあるはずです」と伝えて、納得してもらえるよう働きかけます。
――当事者同士で話合いを進めていく際に心がけていることはありますか?
相手方の意見もよく聞いて、こちらの意見ばかり通さないようにすることです。相手方に対する配慮はいつも意識しています。
――トラブルの渦中にある時はこじれていても、最終的には円満に解決するケースが多いのですか?
はい。当人同士だと感情が対立してこじれてしまいますが、途中から私が中立の立場で間に入ったり、相手方の代理人と直接話して交渉を進めたりすることで、最終的には円満に解決できることが多いです。
――依頼者の方からどんな印象だと言われることが多いですか?
「他の事務所で強く言われて自分の意見を言えなかったけれど、この事務所に来たら話しやすかった」と言われ、依頼してもらったことがあります。また、私自身については、「先生、若いですね!」と言われることが多いです。いい意味なのか悪い意味なのかわからないですけれど(笑)。
依頼者だけではなく、相手方からも信頼を得る
――弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
依頼者のみならず、相手方からも信頼してもらえたケースです。例えば、奥さんがモラハラ被害を訴え、離婚を求めていた案件では、相手方であるご主人に何回も会って話を聞きました。面会を重ねるうちに、ご主人は「橋本弁護士は自分のことを分かってくれる」と思われたようで、硬直的だった態度がだんだん柔らかくなり、最終的によい解決に結びつきました。
また、億を超える財産をお持ちのご主人の離婚案件を手がけたこともあります。多額の財産がある方だと分け方が難しく、話合いにかなり時間がかかることが多いです。ただ、このケースでも、依頼者であるご主人と、相手方である奥様と話合いを重ねて、信頼してもらったことで、1〜2か月ほどの話合いで解決することができました。
闇金の案件を手がけることもあります。しつこい闇金の場合は、「もう払いません」と強気な態度を示しても食い下がってきます。そのような場合は、闇金側の事情に耳を傾け、どうしてそこまでしつこいのか聞き出します。ある案件では、最終的に「先生、自分の顧問弁護士になってくれないか」とお願いされたこともありました。
闇金のようにハードな案件でも、最後は円満に終わるケースもあります。相手方に対してガンガン攻め続けることは好きではないんです。最初は強硬な姿勢でいく場合でも、相手方の話を聞く段階になったら、フレンドリーに接するようにしています。
――「戦わずに勝つ」を貫いてらっしゃるんですね。
そうですね。テレビなどを見ていると、「優秀な弁護士は裁判に勝つ」というイメージがあると思います。しかし、裁判で判決を得るまでには時間がかかりますし、結果がどうなるか、やってみないとわかりません。時間とお金をかけて裁判で戦ったのに、納得できない結果になることも往々にしてあります。やはり、戦わずに、できるだけ話合いで解決することを大事にしたいと思っています。
弁護士の入り口を広げる活動へ
――プライベートについても伺います。休日はどのようにお過ごしですか。
ドライブや温泉に行ったり、友達と飲みに行ったりしています。車が好きで、小学校の時から専門誌を愛読していました。車の魅力はまずかっこいいところ。子どもの時に最初に好きになったのがスポーツカーで、フェラーリやランボルギーニに憧れていました。映像で見ると、音もすごいし、車ならではの特別感が好きです。
また、韓国が好きなので、韓国料理を食べに行ったり、ドラマを見たりすることもあります。
――先生は韓国や中国の国際的な事件も手掛けていると伺いました。きっかけは何だったんですか?
前の事務所が上海の事務所と提携していて、一時期、私がその事務所に赴任していたことがきっかけです。仲良くなった現地の先生から、中国人の方の日本での事件を紹介されて担当しました。逆に、日本人の方の上海での事件をこちらからお願いしたこともあります。事件を手がける中で、交流を深めていきました。
韓国とは、IPBA(環太平洋弁護士協議会)という国際的な弁護士の集まりに登録したことでつながりが生まれました。現地の先生と知り合って、事件の相談をしたり、一緒に案件に取り組んだりしています。
――今後の展望を教えてください。
最近は学校の先生向けに講演を頼まれることがあります。人権や、モンスターペアレンツ対応、教員が個人で責任を負う場合はあるのか、など内容は様々です。問題に対しての法的な理屈や、対応方法まで話しています。講演は非常にやりがいがありますね。法的な知識や観点に触れたことがない方は沢山いらっしゃいます。今後は教員だけではなく、普段弁護士の話を聞く機会がない様々な方と、つながっていきたいと思っています。
――弁護士に相談することは敷居が高いと感じている方は多いですか?
多いと思いますね。何かトラブルが起こった時に、どこに相談すればよいのかわからない方もかなり多いような気がします。事故や破産の問題が起こったときに弁護士に相談することを知らない方もいらっしゃるように見受けられます。税理士に相談したところ、弁護士案件なのではないかと言われて相談にくる方も多いです。講演などを通じて、弁護士に対する入り口を広くしていきたいと強く思います。