無許可の霊柩車で遺体を運んだなどとして、貨物自動車運送事業法違反(無許可経営など)の疑いで、神奈川と東京の葬儀会社5社と経営者が書類送検された。
報道によると、2015年11月ごろから約3か月にわたって、国土交通省の許可を得ずに自家用車などを霊柩車として使用し、遺体を運んだとみられる。
このニュースを受けて、ネット上では「遺族などが個人で運ぶのは問題ないの?」、「じいちゃんの亡骸、俺の車で運んだぞ」などと疑問の声も上がっている。家族が搬送するのに許可はいらないのだろうか。全国霊柩自動車協会の担当者に聞いた。
●「他人の需要に応じて遺体搬送」は違反
ーーなぜ「貨物自動車運送事業」にあたる?
人間は亡くなってしまうと、法律上「物」として捉えます。なので霊柩運送業は一般貨物自動車運送事業であり、事業者は国土交通大臣から許可を受ける必要があります。霊柩車の営業ナンバーは緑色の8。ちなみにタクシーやバスなども緑色のナンバーをつけています。
ーー家族や友人も遺体を運ぶ際には許可が必要?
他人の需要に応じて搬送する場合に違反になります。家族はもちろん、友人も「他人」ではありませんので、問題はありません。
●約20年前から無許可業者が横行、実際にトラブルも
ーーなぜ無許可営業が横行するのでしょうか
霊柩運送業を専業とする会社は全国に20社程度しかなく、多くは葬儀会社などが兼業で行なっています。しかしその場合にも、国交省の許可が必要です。事務所や車庫、ドライバーの休憩施設などを設置するなど様々な要件があり、申請から開始まで数か月かかります。そういった手続きが煩わしいというのもあるのでしょう。
一般的な霊柩車の運賃は10キロで1万5千円、20キロで2万円が相場です。なので葬儀会社が「遺体搬送は無料にします」といって葬儀を引き受けて、白ナンバーで運転しているケースなどがあります。
ーーこれまでにトラブルはあったのでしょうか
相場の倍以上の値段で運賃を取り、消費者センターに「こんなに高い値段は正当なのでしょうか」といった相談も寄せられたことがあります。また棺を壊してしまったといったミスも聞いたことがあります。
運輸支局は許可した業者しか取り締まることができないので、摘発が難しく私たちも困っていました。今回神奈川県警が約2年間かけて摘発してくれたので、今後も取り締まりに期待したいです。