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ファミマ「24時間やめた」オーナーに聞く「時短営業にしてどうなった?」
ファミリーマート立命館大学前店

ファミマ「24時間やめた」オーナーに聞く「時短営業にしてどうなった?」

人手不足や人件費の高騰、長時間労働による疲労――。コンビニの24時間営業について、できればやめたいと考えるフランチャイズ(FC)加盟店オーナーは多い。

一方で、加盟店は、売上から仕入代を引いた「粗利」の半分以上を上納金として、本部に納めている。人件費などは考慮されないため、本部にとっては販売時間が延びた方が良い。24時間営業をやめられない理由の1つだ。

加えて、客の少ない深夜帯は、商品の陳列や清掃などに適した時間とされる。24時間をやめれば、翌朝の商品が品薄だったり、清掃やメンテナンスが行き届かない可能性もある。配送網も考え直さなくてはならないだろう。

現在、大阪府のあるセブンイレブンでは「24時間はもう無理」だとしてオーナーが自主的に営業時間を短縮。24時間は絶対とする本部と対立している。

一方、24時間を見直す「実験」をしている大手もある。ファミリーマートだ。申請して認められれば、月10万円の「24時間手当」がなくなるが、店を閉めることができる。

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2017年7月から、深夜1時~朝6時の5時間閉店し、19時間営業としている京都府の「ファミリーマート立命館大学前店」のオーナー長谷川淳一さん(59歳)に感触を聞いた。(編集部・園田昌也)

●深夜シフトで体調不良、売上データ示して時短交渉

24時間営業のとき、長谷川さんの店でも、深夜はなかなか働き手が集まらなかったという。シフトが埋まっていても、ドタキャンしたり、病気になったりして、長谷川さんがあわてて店に入るということが珍しくなかった。

長谷川さんには昼間、別の事業もあり、睡眠不足から体調不良になったという。そこで、ファミマ本部に時短営業を申請した。

「すんなりオッケーになったわけではないんですよ。エリアの責任者がやってきて、色々とやり取りしました。診断書のほか、時間ごとの売上データも出して、売上が減った分は昼間頑張ってカバーします、という話もしました」(長谷川さん)

長谷川さんは「自分の店は条件がそろっていた」と話す。

店が大学の前にあり、夜はほとんど客がいなかった。時短について、地域住民からのクレームもなし。「働き方改革」の動きも追い風だった。

加えて、長谷川さんのコンビニオーナー歴は30年以上。本部との信頼関係があったのも大きかったと振り返る。

●営業終了までに翌朝の準備

実際の時短営業はどんなオペレーションになっているのだろうか。

「夜のスタッフは、閉店時間の5分後には店を閉めて、退勤しています。早朝は、開店5分前の5時55分出勤ですね」

長谷川さんの店には、最後の配送が夜0時頃に到着する。スタッフはそこから品出しをしつつ、閉店準備も進める。早朝のスタッフは、カギさえ開ければ営業できる。

この方法だと、売り場が品薄だったり、清掃が行き届かなかったりということもない。

「配送ルート的にうちは調整しやすかったのかも知れません。閉店後に届くようなら、カギを渡してバックヤードに置いてもらおうとも考えていましたが、営業時間内なので助かりました。閉店後に届く雑誌類は、倉庫に入れてもらっています」

なお、大手コンビニでも24時間ではない形態として、病院や企業ビルなど施設内の「サテライト店」がある。閉店後、施設内の大型冷蔵庫などに納品してもらっている店もあるそうで、「受取人なし」には実例がある。

●売上は減ったけど、人件費・廃棄も減った

深夜営業は人が集まりづらいだけでなく、深夜割増があるので人件費もかかる。最低賃金が上昇する中、時短営業にすることで、人件費は前年よりも減ったという。

「ただし、5時間分丸々浮いたわけではないんです。これまで深夜のスタッフには、清掃や惣菜用フライヤーのメンテナンスなどもお願いしていました。その分の作業は、夜を増員してやってもらわないといけない。それでも人件費は前年比10%減りました」

規模にもよるが、コンビニは月間で100万円前後の人件費がかかる。10%減はかなり大きな金額だ。

さらに、深夜をなくしたことで、食品の廃棄も減った。夜食需要を見込んだ仕入れを大幅に減らしたのだ。コンビニ業界では、売れ残りの仕入れ代は店舗負担だから、コスト削減につながった。

一方、売上は5%ほど減った。

「深夜の売上がなくなったのはもちろんですが、早く閉めるようになったことで、終わりと始まり1時間(=0時台・6時台)のお客さんも減りました。やはり店が開いていない可能性を考えるんでしょうね」

時短初年度、月10万円の補助金がなくなった分、自身の報酬は減った。しかし、補助金を除いた収益はむしろ増えたという。

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●時短成功も、近所に「24時間のセブン」

競合店が出づらいということも時短営業に踏み切った理由だった。京都市の「風致地区」制度の都合で、周囲の開発は難しい。1kmほど西に建設予定だった他チェーンのコンビニが、住民の反対で計画白紙になったこともあったという。

ところが、時短2年目の2018年6月、長谷川さんの店から500メートル圏内に24時間営業のセブンイレブンができた。

「お客さんとしては、真夜中の買い物ならセブンに行きますよね。それが日中にも影響するなら、24時間に戻さないといけないと考えていました」

今のところ、影響は大きくないそうだが、状況は常に注視している。

「営業目標はクリアしているので、時短にしてよかったです。ただ、うちは『実験店』なので、営業時間は1年ごとに見直す契約。今のところ、自発的に戻すことはないと思いますが、状況によってはまた24時間になる可能性はゼロではないですね」

長谷川さんは条件が揃っていたからこそ、時短がうまくいったと考えている。

「24時間をやめたら何でも解決するわけではないと思います。自分も楽、バイトも楽だけど、売上が激減となったら、生活できなくなります。特に繁華街にある店は、24時間をやめたら苦しくなるかもしれません」

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とはいえ、90年代や00年代ならともかく、コンビニの飽和が指摘され、人手不足が深刻化する現在においては、24時間を維持するかどうか、店側の「経営判断」に委ねるという考え方はありえるはずだ。

なお、ファミマ広報に時短店舗の数などを尋ねたが、「実験段階のため公表していない」とのことだった。

(弁護士ドットコムニュース)

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