「うちの会社、フレックスタイム制なのに、(出勤義務がある)コアタイムが9時から17時なんですよ」。苦笑いで話すのは、都内の会社員・望月かおりさん(仮名・30代)。
通常、フレックス制なら始業・終業時間は労働者の自由。通勤ラッシュを避けたり、子どもの送迎に使ったりと有効活用している人も少なくないはずだ。
しかし、望月さんの場合、休憩1時間だからコアタイムは7時間。柔軟性はほぼないといえる。「結局、通勤ラッシュに巻き込まれるし、これじゃ普通の働き方と一緒だと思うんですけど…」(望月さん)
望月さんの場合、基本的には土日が休みだが、月2回の土曜出勤(9時〜17時)がある。このようなフレックス制は有効と言えるのだろうか。また、会社側にはどんな意図があると考えられるだろうか。竹之内 洋人弁護士に聞いた。
●長すぎるコアタイムは無効になる
ーーこんな長時間のコアタイムは有効と言える?
「法令上、コアタイムを設けることは要件ではなく、なくてもかまいません。設ける場合は労使協定で定めることとされています。
もっとも、フレックスタイム制の趣旨は、就業時間の自由度を高めることにより、労働者の生活と仕事の調和を図ることにあります。コアタイムがあまりに長すぎるような場合は、フレックスタイム制の適用が無効となると考えられ、その旨の行政通達も出されています。
本件では、1日7時間、しかも土曜出勤もあることからすれば、コアタイム以外の自由度はほとんどないと言え、無効となるケースでしょう」
●フレックス制の残業代は月単位で計算、人件費削減がねらい?
ーー望月さんのように、長いコアタイムが設定されている場合、会社側にはどんな意図があると考えられる?
「ありうるとすれば、残業代の削減を狙っているのかもしれません。
フレックスタイム制では、時間外割増賃金を払わなければならない時間を月単位でまとめることができ、月177.14時間(31日の月)または171.42時間(30日の月)を超えない分については、割増の必要がありません。
たとえば、20時まで残業した場合、本来は8時間を超えた部分に対しては割増賃金支払いの必要がありますが、フレックスタイム制なら月単位で上記の時間を超えなければ割増は不要です。たまにしか残業がないような会社・職種なら、考えられることです」
ーー会社によっては、就業規則上はコアタイムがないのに、上司が出社を要求する場合もあるようです
「コアタイムがないと人が集まらず、会議などで困るという声もあるようです。しかし、そうであれば、法に則ってきちんと労使協定で定めるべきでしょう。コアタイムがなければ出社の『業務命令』は出せませんから、出社を断る権利が労働者にはありますし、そのことで不利益を課すことはできません」