雇用にとらわれない「フリーランス」の働き方が注目されている。フリーランスの代表的な職種の1つ、ライター・編集者は、参入障壁の低さもあって、新しくデビューする人も多い。しかし、業務委託において契約書を交わさない業界文化ゆえ、ギャラの未払いや支払いをめぐるトラブルは珍しくないようだ。
そこで、一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」が、雑誌や書籍、ウェブ媒体で活躍するライターたちを集めた座談会を実施。ライターたちは支払いトラブルの実態を明かすとともに、具体的な改善策について議論した。
●支払い関係は「担当編集者によってすごく違う」
座談会では、支払いをめぐるトラブルについての声が多数あがった。業務委託契約書の締結、発注書などの手続きが不徹底という業界ならではの特質も見え隠れする。
「支払いまでの期限が長い。半年くらいタイムラグがあることもあった」
「発注時は10回でいくら」で受けていたものを、12回に伸ばしてほしいと言われた。納品後に発注書が来たら、10回分の金額のみだった。
しかし、業界の問題とも一言では言えない。会社ごと、編集部ごと、厳密には「担当編集者によってすごく違う」「確信犯で言わない人、気づかない人、様々」というのが実態に近いようだ。
深刻なケースとしては、雑誌の休刊にともなって「3ー4か月分の100万以上のギャラ」が踏み倒されたケースもあった。
●「ぬるい感じでやってきた」
一般のビジネス感覚から、なぜ、契約書を交わさないのか?と思う人もいるだろう。
それについて「ライフスタイルやファッション系の編集者は、独立してもお金や契約のことは分からない人が多い」「出版社時代も自社から巣立った人と仲間のように仕事をしていたので、言わないし、聞かれないし、ぬるい感じでやってきた」という声も聞かれた。
また、「他の編集部では●●円でしたと言うと、『しっかりしてるんですね』と言われる」「忙しいからとか安いからといって、仕事を断っていいのかどうか迷いがある」「お金の話を出すと、「ちょっと面倒くさい人』と思われるのではないか」など、受注する側という立場の弱さから来る遠慮もあるようだ。
自衛策として、「出版社には執筆だけ、企業には取材費と執筆費を分けて請求している」「取材なしのまとめ記事の回と、著名人の対談の回とが一律同じ額というのは、どうなんでしょうと、聞いたりする」との声もあった。
●ライターが望むこと
「担当編集者が、税込み、税別の区別が付いていない」「同じ会社でも担当者によって、『税込み』と『税別』で出す人がいる。交通費込みのことも」といい、座談会では、出版社、発注者への希望として、フォーマット作りの必要性が指摘された。
「書類のフォーマットはあるとすごく便利」
「穴埋めして使える『覚書」があると良い。出版社が用意してないことも多いので」
「交通費や資料費なども含めた見積書フォーマットを作る。追加工数が入った場合の増額、ぽしゃった時の着手金も書いておく」
対する発注者側はどう考えているのか。「フリーランス協会」がアンケートをとったところ、出版社など発注者もまた手探りでやっている実態がわかった(「「フリーランス」ライター、契約書交わさない業界慣習でトラブルに…踏み倒しも発生」→ https://www.bengo4.com/c_5/n_7205/)。