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「ブラックバイト」高校生の3割が職場でトラブル経験、どう対処すればいい?
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「ブラックバイト」高校生の3割が職場でトラブル経験、どう対処すればいい?

サービス残業や長時間労働を強いる「ブラックバイト」をめぐる厚生労働省の調査(5月18日発表)で、アルバイトをする高校生の3割以上が、勤務先でのトラブルを経験していたことがわかった。

アンケートは昨年12月から今年2月にかけて実施。アルバイト経験のある高校生1854人から回答があった。アルバイト先としては、スーパーマーケットが22.6%で最も多く、次いでコンビニエンスストアが14.8%、飲食チェーンが6.7%だった。

アルバイト先でのトラブルを経験したという回答者は全体の32.6%で、採用時に合意した以上の勤務をさせられた、準備や片づけの時間の賃金が支払われなかったなどのトラブルがあったという。

もし、「ブラックバイト」被害に遭った場合、どう対処すればいいのだろうか。嶋崎量弁護士に聞いた。

●ユニオンや無料の法律相談を通じて解決を

「子どもの貧困(=保護者の貧困)が拡大する中、遊ぶためではなく、生活のためにアルバイトをしなければならない高校生は多くいます。

高校生は、大学生より年齢が若く社会経験が乏しいため、職場で違法な指示を受けても逆らいづらく、『社会のルール』という名目で違法行為を押しつけられやすいという現実があります。それを悪用した使用者によって、多くの高校生が、違法行為を押しつけられ、ブラックバイトの被害に遭っているのです。

大学生・高校生を問わず、顕在化するブラックバイトの被害で多いのは、退職させてもらえない(退職妨害)、学業に支障がでるようなシフト強要、賃金未払などです」

被害に遭った場合、どうすればいいのだろうか。

「ブラック企業への具体的な対抗手段として、最も現実的かつ有効なのは、労働組合(ユニオン)を通じての解決でしょう。今は、ブラックバイトユニオンや首都圏学生ユニオンなど、高校生アルバイトも含め、学生のブラックバイト被害に専門的に取り組む新しい労働組合が増えてきました。既存の労働組合も、これまで以上にブラックバイト問題に取り組みはじめています。

もちろん、本来であれば、ブラックバイト問題は私のような、労働者側で活動する弁護士を通じて解決することも可能です。ですが、学生アルバイト、特に高校生はどうしても『弁護士に相談する』ことの敷居が高いのか、相談件数は多くありません。費用面で躊躇される方も多いのでしょうが、実際には、ブラック企業被害対策弁護団、日本労働弁護団などで無料電話相談も実施しているので、一度弁護士に相談してみるのもおすすめです。

ユニオンや弁護士に相談することで、職場への改善申入や、退職の仕方などについて個別具体的なアドバイスを受けられます。相談をすることで、不安な気持ちも和らぐでしょう」

●泣き寝入りをせず、被害の回復を

「高校生などにとって、友人や先輩以外の身近な大人の相談相手は、高校の先生や保護者でしょう。ですが、まだまだブラックバイト被害の現実が社会に浸透していないために、相談された身近な大人も、きちんとした対処やアドバイスができず、被害が拡大してしまうことがあります。

退職妨害やシフト強要などは立派な法律トラブルです。病気になったら医師(専門家)の治療を受けるように、まずは気軽に労働トラブルの専門家(ユニオンや弁護士)に相談する文化を浸透させたいですね。

今は、高校生ブラックバイトの被害者の圧倒的多数は、泣き寝入りをしています。被害者が泣き寝入りをすれば、違法な働き方をさせても被害が発覚しないため、そのような現実を悪用しようとする使用者によって、ブラックバイトが蔓延していきます。これを食い止めるには、泣き寝入りをせず、きちんと被害回復をする方を増やしていくことが最善の方法だと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

嶋崎 量
嶋崎 量(しまさき ちから)弁護士 神奈川総合法律事務所
日本労働弁護団常任幹事、ブラック企業対策プロジェクト事務局長。共著に「裁量労働はなぜ危険かー『働き方改革』の闇」「ブラック企業のない社会へ」(岩波ブックレット)、「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)など。

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